木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-四代目火影-
火の国の大名は「三代目は良くやっていてくれたのに、惜しいのう」とヒルゼンの活躍をいい方向に捉えていたようだが、ミナトの火影就任には快く納得もした。
火影になるという事は生易しいものでは無い。ヒルゼンは誹謗中傷も多く受けてきたし、上手くいく事ばかりでは無い事をよく知っている。もう少し情勢を整えた上でミナトに引渡しをしたかったが、時間の流れはそう甘くない。
ミナトにはヒルゼンからその説を受け、覚悟を決めて四代目火影に着任する事に決めた。
『大丈夫だよ、ミナトなら』
ヒルゼン専用の火影邸の一室でセンリは赤く染まっていく木ノ葉の里を見つめながら言う。
「この短期間の戦争で、多大なる犠牲者を出してしまったのはワシの責任です。三代目火影になってからも里の者達の期待に添えられたかどうかは分かりませぬ。初代様や二代目様のようにはいきませんでした……」
『何言ってるの。火影の仕事はみんなが思ってるより大変なものだよ。上手くいかないことばかりだし、みんなの意見一つ一つに応えることなんて難しい』
夕暮れで少し赤く見えるセンリの髪がさらりと動いてヒルゼンに微笑んだ。
『でもヒルゼンは頑張ったよ。里の為に、みんなの為に、柱間と扉間くんの火の意志を受け継いで頑張った。努力した。色んな事に悩んで、それでも未来の為に頑張ってた事、分かってるよ』
「センリ様…」
『過去を振り返って後悔できるのは、心が強い証拠だ。でも、ちゃんと自分の頑張った部分も褒めてあげなきゃ、ダメだよ!』
ニカッと無邪気に笑うセンリは、ヒルゼンの記憶に残るもので懐かしさを感じた。それと同時に相談役として昔から変わらず自分を支えてくれていたセンリに感謝の意が溢れる。
「センリ様には世話ばかりかけてきましたな……情けないところも多々見せてしまいました…。しかし、センリ様の言葉に何度も救われました。それはワシだけでなく、里の者達も……」
センリは少し驚いたような、不思議そうな顔をした。
「ミナトが火影になってもどうか支えてやって下され。あなたの存在は忍にとっての光そのもの。誰か道に迷ってしまった時には先の道を照らし、導いて下さる光です。この里を照らして下さる、光です」
『ヒルゼンってば!私、そんなにすごいものじゃないんだけど!』
苦笑いするセンリだったが、ヒルゼンは確かに心から思っていた。
「(これからも、どうか里を…)」
赤く染まる里はいつもの風景だったが、戦争が終結し、新しい時代が訪れるというだけで途端に明るく見える。ヒルゼンはしばらくセンリと共に夕日が里に沈んでいく様子を見ていた。
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