- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-神無毘橋の奇跡-



「センリ様…!?」


リンを左腕に、カカシを右腕に抱えて近くの大きな木の幹に飛び移る。カカシとリンの視界に映ったのは、センリの姿だった。

センリはカカシとリンを木の幹に降ろすと、安心させるように僅かに笑みを浮かべた。


『大丈夫?』


センリが二人に問い掛けると同時に首が縦に動く。リンの方には目立った外傷は無いが、カカシは息も絶え絶えで、体がふらついている。センリがカカシの顔を見ると左目に大きく切り裂かれた傷があり、見慣れた赤い巴模様がそこにはあった。


『!……そうか、その目は……』


オビトが写輪眼を開眼し、そしてそれを移植したのだとセンリはすぐに理解した。


「オビトは……命と引き換えにオレにこの眼を渡したんです…!」


カカシは珍しく息を乱していた。
オビトが死んだという現実からか、カカシがこれ程までに疲弊しているせいか、岩隠れの増援に囲まれているという恐怖からなのか、リンの両目から涙が滴り落ちていた。

カカシはふらつく足に力を入れて右手を掲げる。雷遁のチャクラが流れ、カカシの手に纒わり付くように閃光を散らした。

『カカシ、大丈夫だよ』

カカシが岩隠れの増援と戦おうとしている事に気付いてセンリはそっとそれを制した。カカシは荒い息を繰り返しながらセンリを見つめた。


「…ハハッ。まさかあの“女神”さまが出てくるとはなァ」

「女神だか何だかは知らねぇが、他の二人は力も残ってねぇガキ二人。こっちは二十人。勝てるわけがねェ!」


センリは辺り一帯を素早く感知したがどうやら本当の事のようだ。しかも恐らく全員が上忍レベル。精鋭達をここに増援として送り込んでいたのは間違いない事実だった。
若さ故なのか、国境付近の軍勢の意見とは違い、こちらは相手がセンリであろうと戦う構えだ。

センリはカカシとリンの前に手をかざし、二人を囲むようにチャクラを放った。


『二人はここから動かないで』

「ですが、センリ様一人では…!」


カカシの言葉を聞いてセンリはふっと微笑んだ。


『大丈夫。それに………オビトは死んでないよ』

「!」


驚くカカシだったがセンリは至って通常通りだ。今更になってなぜセンリが伝説と言われるのか、少しわかった気もしていた。なぜならもう既に心の中で「もう大丈夫だ」という確信じみた感覚が広がっていたからだ。


『でも早く助けてあげないとね……。カカシ、ここは大丈夫だから、休んで』


センリの言っている事が本当なのか嘘なのか分からないまま、突然カカシの体の力が抜ける。薄れゆく意識の中カカシの目に映ったのは、自分に背を向けて敵を見上げるセンリの勇ましくも美しい姿だった。
[ 57/169 ]

[← ] [ →]

back