- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-神無毘橋の奇跡-



『一体………?』


突然消えた忍の軍勢に驚いてセンリは目を見張っていたが、すぐに状況を思い出した。退いていった忍達の真意はよく分からなかったが、ひとまず疲弊したマダラに駆け寄る。


「砂利共が、好き勝手な呼称を」

マダラは憎々しげに言ったが、一応は疲弊していたようで、写輪眼が消え去った。


『そっか、なるほど……多分その鎌が悪いんだと思うんだけど…』


本当に気の毒そうにセンリはマダラの持っている大きな鎌を指差したが、マダラはフンと鼻を鳴らしただけだった。


センリはすぐに現場にいた忍達の治療にあたる。影分身を一人作り、倒れていた岩隠れの忍の治療もした。他のほとんどの者達は不思議そうにそれを見ていたが、センリの事を知る者ならばその行動は全く不可思議ではなかった。

木ノ葉隠れの忍達は死に直結するような重傷を負った者はいなかったが、そこにいた、マダラ以外の木ノ葉の忍全員が戦えない状態だった。


『よく頑張ったね』


怪我人の最後の一人、猿飛一族の忍の腹に手をかざしながらセンリは薄く微笑む。忍は痛みが和らいだのか、突然安心したような表情をした。


「マダラ様がいなかったらここの忍達は全滅していました…。増援にきたのがマダラ様だと分かった途端、ヤツらはここだけに集中してかなりの数の忍をどんどん送り込んでくる卑怯な手を使い始めましたが……それでもオレたちでは到底及ばない戦闘力です…」

地面に横たわりながらその忍は、ただひとり怪我も無く木の根元に座っているマダラに感謝の表情を向けた。他の木ノ葉の忍達も同様に頷いていた。


「信じられないことです。二ヶ月も勢いを緩めずあれだけの数の敵を圧倒し続けるなんて……本当に……。本当に信じられないです」

上忍のくノ一は感嘆して言葉も見つからない様子だった。だがマダラは鼻を鳴らし、つまらなそうな表情をした。


「数が多いだけで、個々の戦闘力はお粗末だった。もう少しまともに踊れるかと思ったが……無闇矢鱈に数を送り込んできているせいで、まるで連携がとれていない。手応えも全く無い……あの程度の忍を片付けるなど、赤子の手をひねるようなものだ」


マダラは手袋をはめ直しながら事も無げに言った。その後に「柱間なら……―――」と続きそうな雰囲気にセンリは僅かに口角を上げる。木ノ葉隠れの忍達は賞賛のと畏怖を込めた目でマダラを見ていた。


「まあ、しかし……取るに足らない勢力だとしても、さすがに長期間となると多少は堪える…」

「普通なら無理ですよ」


カルマの力のお陰で一般的な人間よりはかなり体力を保つ事が出来るが、先程のような作戦をひかれては流石に疲れも出るだろう。マダラは長く息を吐いた。


「さすがは伝説と言われるマダラ様です……マダラ様がいれば、この先も木ノ葉隠れが戦争に負ける事はないでしょう」

「それにセンリ様も加われば、私達木ノ葉隠れの安全は保証されているようなものです」


敬意を存分に込めた目で忍が言ったが、マダラは気に食わなそうに眉を寄せる。


「強き者に縋り、里の若き忍達が強くなる努力を放棄する事など言語道断。感謝もいいが、まずは己自身と向き合う事を忘れるな。他力本願でいては、いずれ必ず後悔するぞ」


マダラの厳しい口調と視線に、忍達は身体をビクッと揺らした。かなり手厳しい言葉だったが、センリは確かにその通りだとも思った。



『この先の未来を作っていくのは、あなた達だから。私達二人がどうこうしたって意味がないんだよ。もちろん私達は里を守る為に戦うけど、あなた達もきちんと自分のやるべき事から目を離さず、自分自身の道をしっかり選んで歩いてね』

「は、はい……」


センリの穏やかな声を聞くと、忍達は焦りながらも反省したように各々頷いた。きちんと受け取ってくれたようで、センリは安心したように微笑んだ。

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