- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-神無毘橋の奇跡-



国境付近では至る所で戦いが繰り広げられていて、センリは血だらけの地面を走り抜けてマダラの元に駆け寄った。

木ノ葉の忍達がセンリの姿に気付き、驚きながらも見るからに安堵したように息を吐いた。


「…!…センリ…!?」


センリの姿にマダラは驚いたが、駆け寄ってくるその姿に突然懐かしさを感じた。

マダラが火遁忍術を繰り出し、相手の忍達がそれを水遁で打ち返したのか、周囲には薄く煙が漂っていた。マダラは写輪眼で戦うくらいにはまだ余裕はあったが、返り血を浴び、どう見ても疲れ切った表情をしていた。万華鏡写輪眼でないところを見る限り相当長い時間戦い続けていたのかもしれない。


『遅くなってごめんね。私が代わるから…マダラは休んで』

「しかし……」

『いいから』


この煙が漂っているうちにどうにかマダラに一度戦線離脱をしてほしかったが、突然強い風が巻き起こり煙が瞬く間に消え去ってしまう。

はっきりと周囲が見渡せるようになったセンリの視界に移ったのは、横たわるいくつかの忍達の遺体と負傷者、それから前方には見渡しただけでも四、五百人は見える、岩隠れの忍の姿だった。


数百人とはいえ、マダラの実力ならば蹴散らす事は容易い数ではあったが、二ヶ月もほぼ休み無く戦っていたのなら話は別だ。木ノ葉の忍を守りながらもよく戦ったものだとセンリはマダラを見た。
そしてもう一度岩隠れの忍に目を向けるが少し違和感を感じた。


『?……なんだろ、戦ってる形跡がないけど…』

「当たり前だ。岩隠れは次から次へとここ一点に新しい忍共を送り込んできているのだからな。奴らはその前に敗れて引いていった部隊と入れ替わりにたった今現れたところだ」


岩隠れの少しも汚れていない忍服にはそういう訳があったのかとセンリが納得する。それなら尚更よく倒れずに戦っていたものだと感嘆してマダラを見たが、先に動いたのは岩隠れの忍達だった。


「…!……来るぞ…!」

マダラが早口に言うのと岩隠れの忍達が一斉に地面に手を着くのとはほぼ同時だった。すぐにセンリも臨戦態勢を取った。


「(土遁・大地動核!)」

バキバキという音を立てて、数百の地割れの線が瞬時にセンリ達に向かって伸びてきていた。大勢でやられては術の範囲もかなり広い。自里の負傷者と死者共々地割れの中に落とすつもりで術を放っている。

マダラが攻撃体制になるより早く、センリが両手をパシッと地面に付けていた。


『(氷蝕流化の術!)』


今度はセンリが手を付けた部分がピキピキッと高い音を立てて氷で覆われ瞬時に変化していった。物凄い速度で岩隠れの忍達の方へと氷漬けが進んでいき、地割れがセンリらのところへ到達する前に、地面のほとんどが氷で覆われた。氷は瞬時に地中深くまで到達するので、どんなに広い範囲の地割だとしても止める事は可能だ。太陽の光に反射してキラキラと光を放っている。

突然凍った地面一帯を見て岩隠れの忍達は驚きの表情をしていたが、すっくと立つセンリを視界にとらえるとすぐに何かを理解した。


「氷……お、オイ、あれまさか…」

岩隠れの忍の誰かの呟きが微かに聞こえ、それに続いて忍達が顔をしかめ始めた。


「“女神”と“死神”が揃うなんて…。まずいぞ……」


先頭に立っている手練であろう初老の忍達が、一歩後退りしたかと思うと後ろを振り返って仲間に合図を掛けた。


「一度引くぞ!」

「!?しかし隊長……」

「いいから、言う通りにしろ!体制を立て直す!」


隊長と思われる忍が大声を上げ、その瞬間に辺りにいた忍達が一斉に煙玉を投げ付けた。


『!』


今度は目を覆わないといられないような煙がセンリとマダラの周りを舞う。センリは咄嗟に広範囲に光の壁を繰り出したが、攻撃等はされず、次にセンリが目を開けると目の前から忍の軍勢は跡形もなく消えていた。
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