木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-第3次忍界大戦-
それから何日か経った日の事、センリは今度はオビトと向き合って話をしていた。道の石製のベンチに座っていたオビトを見付け、センリが隣に腰掛けると待ってましたと言わんばかりにその口からカカシの愚痴が紡がれた。
ミナト班で修業をするようになって以前より近い距離でカカシと関わる事になり、オビトは色々な事に不満があるようだった。
カカシとオビトは真逆と言ってもいいくらい性格と思考が異なっていて、喧嘩をするのは仕方の無いように思えた。
「センリからも言ってくれよ!あいつ口を開けば、掟だルールだのってうるせーんだ」
掟に拘るカカシは班内の活動の時も健在らしくオビトはそれにウンザリしていた。
『んん、でもカカシの言っている事も間違いじゃないよ。カカシはこの間の修業の時もオビトが遅刻してきたって怒ってたよ』
「それは…おばあちゃんの荷物持ちの手伝いをしてて、」
オビトが言い訳をし始めたのでセンリはそっとそれを制した。
『それなら分身の術を使う、とかしてみたら?』
「あ…そっか。そんな事考えもしなかった!確かにそうすれば遅刻はしないし、おばあちゃんも助けられるし…」
オビト自身に悪気はなく、ただお年寄りを助けたいという気持ちからそれを実行しているのでセンリも咎めはしなかった。
「センリはいい事言うなあ。それに比べてカカシは血も涙もない冷徹ヤローだぜ。何でリンはあんなのがいいんだ…」
独り言のようにオビトが呟く。
オビトはリンに想いを寄せていたが、そのリンはカカシに憧れを抱いていた。想いの入れ違いに大きなため息を吐いてオビトは「あーあ」と伸びをした。
『なら、オビトはリンに認められるくらいかっこよくならないとね!』
センリの言葉にオビトは僅かに笑った。
「それは当たり前だ!カカシより強くなって、ぜってーリンを振り向かせてみせる!」
『その調子だよ!』
普段リンを前にするとどうしても心がブレーキをかけてしまい、オビトは中々気持ちを伝えられずにいたがセンリの前では包み隠さずそれを見せていた。
「いつか絶対火影になって…そんでリンにもカカシにも、オレの存在を認められるように…それにはまず、やっぱり写輪眼だよなあ」
オビトはまだ写輪眼を開眼しておらず、その事でもよく悩んでいた。
『焦る事ないよ』
「でもさー、やっぱりうちはの忍といえば写輪眼だろ?マダラは、「お前が心から肝要だと思うものを見つけ、自分の全てを懸けてもそれを守りたいと思えば自ずと開眼する」…って言うんだけど、大事なものなんてありすぎて分かんねーよ」
オビトは頭の後ろで手を組んで唇を尖らせる。うーんと唸る。センリは一瞬目を瞬かせたが、すぐに嬉しさが込み上げ笑顔になった。マダラがそれをオビトに教える事がどれだけ重要な事か、センリは理解していた。
『本当に、その通りだよ。本当に守りたいものに気付く事が出来れば、すぐに開眼できる』
「それが中々難しいんだよ……。だから、マダラは何に気付いたんだって聞いても「お前が俺に届いた時に教えてやる」とか言うしさあ」
なるほど、とセンリは納得した。マダラが言いそうだ。一方オビトは、納得いかなそうにムーッと口を尖らせたままだった。センリはオビトの背中にポンと手を乗せ、顔を覗き込んだ。
『大丈夫、オビトならきっと、気付く事が出来るよ。私が保証する!』
センリがにっこりすると、オビトも徐々に表情を崩し、少しだけ笑みを返した。センリの笑顔を見ると重なる記憶があった。
「センリって……リンに似てるよな」
『ん?』
オビトはまじまじとセンリを観察してふと思い出したように呟いた。
「雰囲気とか性格とか……無意識に人の顔を覗き込んでくるところとか」
『そうかな?』
にこにこしているセンリを見てオビトは確信して頷いた。
「優しいところとか怒らないところとか、世話を焼いてくるところとか、そっくりだ」
『そう?やだあ、リンみたいに可愛い子に似てるって言われちゃうと嬉しいなあ』
「いや、顔はちょっと……うん……センリは美人だから」
『そんな事言って!オビトがリンの写真見てニヤニヤしてたの知ってるぞ〜?』
「なっ、そ、それ誰から聞いたんだよ!まさかカカシか!?」
『それは秘密!』
「あっ、オイ、センリ!」
ニヤニヤと笑って駆け出していくセンリの後をオビトは慌てて追い掛ける。
戦争が無ければ、ただの平和な日常だった。
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