- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-第3次忍界大戦-



ヒルゼンと話をした夜から数日後、自宅に帰ってもマダラはいないのでセンリはカカシのところを訪れていた。鍵をかけていない、不用心とも思えるドアを一応ノックしてセンリはカカシの自宅に上がる。

部屋の中は薄暗くセンリがカチッと電気のスイッチを入れるとカカシは畳の上でクナイの整理をしていた。


『電気付けないと暗いでしょ』

センリが少し驚いてカカシの側に野菜の入った袋を置く。カカシは突然現れたセンリに驚きもせず見上げ、そしてまたクナイに視線を移した。


「…戦いの場でも夜目が利くように、部屋を暗くしていたんです」


なるほど、とセンリが感心しているとふとカカシの手が止まる。


「今日は、班の初顔合わせでした」


カカシがそういう事を話すのは珍しい。センリは興味深そうにカカシの前の畳に腰を下ろす。


『どうだった?』

「特に目立った事はないです。オビトはいつも通り遅刻してきましたし…」


オビトは目的地に向かうのに何か他の事に必ず時間をかけている。また困っているお年寄りの世話でもしていたのかなとセンリは考えてクスクスと笑った。


「笑い事ではありません。あれが課された任務だったとしたら忍の掟を破る事になるんですよ。遅刻なんて本来許される事ではありませんから」


カカシはマスクの下で不機嫌そうな顔をした。カカシの頑なな考えにセンリも困ったように笑う。


『オビトは困ってる人を見て見ぬ振り出来ないからね。許してあげて』

「センリ様も、ミナト先生も甘いんです。そんな事だとオビトの為になりません」


確かにミナトも笑ってそれを許すだろうなとセンリも考えたが、カカシの表情は険しいままだ。センリはふっと息を漏らして座り直した。


『カカシ、あなたの考えは確かに間違ってない。世の中のルールは大切だし、それは忍にとってもそう。忍者にとっての掟やルールはたくさんあって、それを守るのは大事な事』


当然だというカカシの目を見てセンリは続ける。


『でも、私達は忍である前に一人の人間だよ。カカシは忍として確かに正しい。だけどオビトは人間として間違った事はしてないと思うよ』

「………」


センリの言葉の意味を考えるようにカカシは黙り込み、微かに眉を寄せた。


『カカシにだって心はあるでしょ?本当はどうしたいのか、どうなりたいのか、よく考えて行動するといいよ』


説教でもなく叱りの言葉ではなく、選択肢を与えながらも優しいセンリの言葉にカカシは俯いた。


「(オレは……)」


何やら思い耽っている様子のカカシを見てセンリは立ち上がり、夕食の準備をし始めた。

自分がカカシをいい方向に導けなくても、それを手助けできる存在はたくさんある。師であったり、仲間であったり、敵の存在であったり…。カカシが本当に大事な事に気付くのはそう遠くないのではないかとセンリは思っていた。
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