- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-第3次忍界大戦-



第三次忍界大戦と呼ばれる戦争が起こったのは、前回の大戦からたった数年後の事だった。


各里同士の繋がりが不安定だった事、ここ二十年ほどで一気に忍の人口が増えた事、産業と戦争と経済システムがより洗練された事……この戦争が起きる原因はこれまでで一番多くあった。


それから理由としてはもう一つ。
前回の戦争で戦乱の影に隠れて、忍達が各国の有能な大名を暗殺していた事も大きな要因だった。そのツケが今、回ってきたようなものだった。

砂隠れは戦争の少し前に三代風影が失踪し、その為に砂隠れは風影が他里の忍に拉致されたと考え、強行的に戦争に参加していた。内部では少々反発も起きているようだった。



ヒルゼンは早急に情勢を整え、作戦を打ったが大きく変わったのは忍として優秀な人材であれば大人でなくとも敵地に向かわせるという事だった。

しかしこうなってしまった事にも理由はある。


今回の戦争は岩隠れと木ノ葉隠れ間の戦いといっても過言ではなかった。この数年で戦力強化と増加に力を入れていたらしい岩隠れは、まるでその力を見せ付けるように木ノ葉の忍達の数を大きく上回る戦闘員を送り込んできたのだ。それによって火の国の国境付近の至る所で戦いが勃発していた。

そしてそれに対抗するには同じだけの戦力を敵地に送り出さなくてはならない。大軍勢に国境を攻めいられたら最後、木ノ葉の里は崩壊を辿るだろう。何としてでも火の国内への侵入を防ぎたかった。



「全く……一体奴らは前回の戦争で何を学んだというのか……」


あまりにも早い三度目の戦争に、マダラは今までにない失望のため息を吐いていた。


『むしろ…この前の戦争を経験して、木ノ葉隠れに勝つにはどうするか――って考えてるのかな』

「十中八九そうだろうな。確か…随分前に土影は、包帯男から両天秤の小僧に変わっていたはずだ。あの無とかいう奴は随分戦力に拘っていたようだからな…オオノキはその考えを継いだのだろう。他四国にとって木ノ葉の戦力は脅威…。全く……扉間も“里を守る為なら手段を選ばぬ”ような奴だったからな…その方針自体に異論はあまり無いが、こうも影響するとは……。それにオオノキの奴、昔一度力の差を思い知らされた事を余程引き摺っていると見える」


マダラは呆れた表情だった。センリは第一回目の大戦のときに、オオノキと無の二人相手に、柱間とマダラが難なく圧勝していたと言っていたのを思い出した。


『オオノキくん、か…』

センリが目を伏せるのを見てマダラも何十年か前――初の五影会談の時を思い返していた。



「初代土影は確かに好々爺とは程遠かったが、奴なりの信念を貫こうとしていたようだし、それなりに常識のある人物だったはずだが…孫の方は少し間違った方向に頭が硬くなってしまったようだな」

『圧倒的な力が怖いからこそ、それを封じようとする……そういう風に思っているのかな、オオノキくんは』


珍しく現実味のある事を言うセンリに、マダラは僅かに驚きを見せた。



「まあ確かに…俺達がいる限り、他里からの懸念を拭い去る事は不可能かもしれんな。柱間の狙う人間がいた事然り…人々は圧倒的な力を恐れる……。平和を望むが、それを制圧しなければ――自分達より上の存在を抹消しなければ安心感を得られないというのもまた、人間の真理なのだろう」


マダラは少し諦めにも似た声音だったが、センリはなぜか力強い眼差しでマダラを見返していた。



『“強い力は破壊の為ではなく、守る為のもの”……。これまでたくさんの人が、それを分かってくれた。それを伝える事を諦めなければ…必ずオオノキくんだって分かってくれる』


何度戦いを経験しても、たくさんのものを失くしても、センリの信念が変わる事は絶対になかった。畏怖する程の強い光を宿したセンリの金色の瞳を見て、マダラは少し眩しそうに目を細めた。



「俺は、お前以外の人間の言葉は信用していない……。故にお前の信じる道が、俺の歩む道だ。お前が諦めんと言うなら……俺も、そうしよう」


疑う事はやめたという見切りのつけたようなマダラの様子を見て、センリは力強く頷いた。



『ありがとう、マダラ。大丈夫…“戦争”には、負けないよ』


他里の名前ではなく、“戦”と表現するセンリに、やはりマダラはふっと小さくため息を吐いた。嫌気が差している訳ではなく、センリの放つ明かりに心の奥底まで照らされてしまっている自分自身に笑いが漏れた。


「フン…そんなものに負けてたまるか」


苦しみを受け止めてくれる存在があれば、どんな痛みを伴ったとしても希望を手放さずにいられるだろう。
マダラは太陽のような眼差しをしっかりと受け取り、同じように強い言葉を返した。


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