- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-死した白い牙と新たな世代-



クシナとミナトの事を聞いてすぐに、センリはもう一つ嬉しい報告を受けて、その日は一日中気分が良かった。自分の祝ではないが食卓も普段より豪勢で、そういう時は決まって何か周囲で喜ばしい事が起きた時だとマダラはすぐに理解した。


ソファーの前に座り込み晩酌に付き合いながら始終嬉しげなセンリの表情を見てマダラも何故か酒が進む。ひとしきりセンリからその理由を聞いて、マダラは酒器を机に置いた。


『…フガクとミコトが結婚なんてさあ…。ミコトなんて本当に嬉しそうでね。フガクはいつもみたいにクールだったけど、あれ、絶対照れてたよ!』

「あいつらはいずれそうなるだろうとは思っていたが、それがあのフガクから求婚したという現場を想像すると……――」


自分の前では驚くくらい生真面目で、そんな感情持ち合わせていないという雰囲気があるフガクがプロポーズする瞬間を思い浮かべて、マダラはククッと笑いを漏らした。


『ふふっ、見てみたかったよね…。それに、ミナトとクシナも無事に結ばれたみたいだし、こういう報告って何だか嬉しいよね』


本当に嬉しそうな表情で、自分の事のようにそれを喜ぶセンリを見ていると何故かマダラも心嬉しくなる。


「他人の交際事情を聞いてそんなに喜ぶのはお前くらいだと思うが……まあ、お前が楽しいならそれで良い」

『うんうん、嬉しいし楽しいよ!』


大金を手に入れるよりこちらの報告の方がセンリは喜ぶのではないかと考えてマダラは少し可笑しくなった。

マダラが薄く微笑んでいるのを見てセンリはふと思い出した事があった。



『そういえば…この間フガクと会った時に、私とマダラが結婚してから四十年くらい経つかなあっていう話をしたら、お茶零すくらいびっくりしてたよ』

「そうか……もうそんなに経ったか」


毎年マダラの誕生日にはそれも一緒に祝ってはいたがもう四十回もそれをしていたのかと思い、内心自分でも驚いていた。


『ね、早いよね。そりゃマダラもおじいちゃんみたくなる訳だ』

センリは一人でウンウン頷いて納得した。


「言っておくが、お前は俺より年寄りだからな」

『うん、分かってるけど、そうじゃなくてなんかマダラはこう…話し方とかカルマみたいになってきたし……』

「俺だってもう…七十年も生きているんだ。そうなるのは当たり前だろう。むしろ俺にとったらお前が何故そんなに天真爛漫でいられるのか不思議で仕方ないが。いつまでも純粋、というか…初々しい反応をするしな」


センリの方が百年も多く生きている事を踏まえ、いくら時間が過ぎるのが早く感じるとはいえここまで性格が変わらない人間の方が不思議に感じた。
センリは『そうかなあ』と言って全く自覚はないようだったが、しかしその飾らない、変わらない純粋さが自分を虜にして放さないのだろうかと思いマダラは自分自身に笑った。



『今度は一緒にお祝いしにいこうね!ミナトとクシナはマダラに会いたがってたよ!』


センリは愉しげだったが、マダラは少し訝しげな眉を寄せた。



「何で俺が」

『えーっ!だってほら、言うなれば私達……愛のキューピットでしょ?』


マダラは自分がそんなものになったと想像すると鳥肌が立ち、ますます顔をしかめた。本気で嫌がっていない事は分かっていたのでセンリは微笑んだ。


「気色悪い事を言うな」

『気色悪くないよ!マダラが恋のキューピットかあ、とっても素敵だね』

「勘弁してくれ」

『ええー、ヤダ、勘弁しない』


いつも意地悪をされてばかりだとセンリはふと思い、ニヤニヤ笑いを浮かべながらマダラに言い返した。マダラは一瞬面食らったようだが、すぐにいつもような表情に戻った。


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