木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-死した白い牙と新たな世代-



自来也のように里を一旦去って行く者もいたが、センリはそれと同じように里内の人々の繋がりに感動する事も多々あった。


ミナトとクシナがもうすぐ十九歳を迎えると行った時、とうとう恋仲になったと知らせを受けた。クシナもミナトも大層照れた面持ちだったが、二人が共にセンリに報告に来た時には、さぞ幸せそうな顔をしていた。


「クシナに想いを伝えられて、こうなれたのも…センリ様のお陰です」


大人に近付くにつれて眉目秀麗さが際立つようになったミナトは心からそう思っているという表情をしていた。クシナもその通りだと首を縦に振っていた。


『そう言ってくれると嬉しいな。でも、二人がこうして結ばれたのはミナトとクシナの自分達の努力のお陰だよ!忍としてもそうだけど、特にクシナは大きくなるにつれてしっかり自分自身と向き合うようになってたもの』

「それはセンリを見習ったからだってばね!」


クシナは少し照れた表情で礼を言うが、センリが自分からなにかした訳では無いし、変われたというのもクシナ自身の努力からだった。


「オレだってそうです。まだ子どもだった頃、センリ様に言われた事がきっかけで、あれからはクシナに何でも伝えるようにしているんです」

「余計なことまでね」

「あ、あはは…あれは……うん、ごめん」

「ミナト、本当にそう思ってる?」


またミナトが「あれ?ちょっとふくよかになった?」と言ってクシナを怒らせたのだろうか。
昔より丸くなったといえど気の強さはまだ健在で、クシナに圧倒されて苦笑いしているミナトを見てセンリは笑った。


『まあまあクシナ。ミナトはクシナの事が好きで仕方ないから色々言うんだよ。許してあげて』


センリが笑いながらクシナに言うと彼女はプリプリしながらも少し表情を和らげた。


「まあ、センリがそう言うなら…」


クシナを怒らせた後の事をよく知っているミナトはホッとして胸をなで下ろす。


『ふふっ、まあクシナのそういうお転婆なところも可愛いけどね』


センリがクスクス笑いながら言えばクシナは自身の髪に負けず劣らず顔を赤くした。それはお転婆という事なのだろうかとミナトは少々疑問に思ったがそれは口に出さずにいた。


「センリはいつまでも私を子ども扱いしすぎだってばね」

『そうしてるつもりは無いんだけど、やっぱりクシナは可愛いっていうか、何か妹みたいな気がして。私を“様”つけて呼ばない数少ない忍だしね』


くの一は比較的自我がしっかりしていて気の強い者が多かったが、センリはそういう女性や子ども達が好きだった。子どもであれば尚更、少し我が侭なくらいが丁度可愛いと思っているセンリを分かっていてクシナは頬を赤らめたまま微笑んだ。


「私も…兄弟はいないから分からないけど、センリはお姉ちゃんみたいな存在だなって、ずっと小さい頃から思っていたってばね。ちょっと子どもっぽいところもあるけど…」

『えーっ!私がクシナのお姉ちゃんなんて、も〜、嬉しい事言うんだから!この!』

「セ、センリ!」


センリはクシナの長い髪をワシワシと豪快に撫でる。その様子をミナトは微笑ましげに見つめていた。
クシナからすると相当年上のセンリだったが、今では少し姉のような気分になる事も多々あった。



『クシナは本当に大人っぽくなったよ!』

「マダラ先生からも、“もっと落ち着いたらどうだ”って散々言われたからね」


クシナがマダラの口調を真似るとミナトは苦笑した。



『マダラなりに二人を心配してたんだよ。きっと早く恋人同士にならないかなーって思ってたよ!』

「オレも、マダラ様から“お前はもう少し感情を口にした方がいい”って良くアドバイスを貰いました」

「ミナトはそのアドバイスを勘違いし過ぎだってばね!」


再びクシナが眉を上げるのでセンリは、まあまあとそれを制した。



「マダラ先生がいうのは何ていうかこう…褒め言葉とか愛情表現だってばね!ねえ、センリ?」

『えっ?うん…確かにそういう事だろうね』


センリは顎に手を当て納得したように言うと、クシナはそれ見た事かという視線をミナトに送った。


「なるほど…マダラ様は、そういうタイプなんですね?凄く意外と……」

『そう、凄く意外にね…。逆に意地悪も口に出してくるけど…何でも褒めてくれるのはいつもすごく嬉しいなって思ってるよ』

「マダラ先生はいつもセンリが可愛い可愛いって言ってるからね」

『そ、そんな頻繁には言ってないと思うけど…』

「そんな事ないってばね!」

「ウーン……凄く、意外……」



クシナとミナトとセンリとで、若干言いたい事に違いがあったが、結局三人は顔を見合せて笑った。

他里から来た部外者ということで倦厭されていたクシナの心の拠り所としてセンリは重要な存在で、里にとってもミナトにとってもそれは同じだった。人の境遇や育った環境など一切気にする事なく誰にも平等に接する事が出来るセンリはミナトの憧れでもあった。
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