木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-死した白い牙と新たな世代-
ここ最近のアカデミー生たちは優秀な人材が多く、幼くして下忍や中忍になる子どもが続出していた。
カカシの後を追うようにオビトとリンも下忍試験に合格し、続々とライバル達も任務につくようになる。カカシらの世代だけでなくそれはどの世代も同じで、時には難しい任務に四苦八苦する事もあったが誰もが忍として成長していた。
里の子どもたちがまたどんどんと任務に着くようになり、十八歳になったクシナも、ミナトの後を追うように上忍にまで昇格する事が出来ていた。
任務をこなすようになってからはさすがに頻度は減っていたが、相変わらずクシナと懇意にしていたセンリは、心から上忍昇格を祝っていた。
『おめでとうクシナ!本当によく頑張ったね!今日は私が奢っちゃうから、遠慮なくたっくさん食べてね!』
「やった!センリ様々だってばね!こんなに良いお肉を食べられるなんて……!」
高級焼肉を前にしてクシナは目を輝かせていた。その表情は幼い頃と似通ってはいるが、大人の女性になったクシナを前に、大きくなったものだとセンリは一人微笑んだ。
「――ねぇ、センリ。最近マダラ先生は元気?」
美味しそうに肉を頬張りながらクシナが問いかける。
『この前まで少し里から出てたけど…でも元気だよ!』
「そうなんだ。この頃あんまり特訓に付き合ってくれないから随分忙しいんだって、ちょっと心配だったんだってばね」
確かに、クシナが少女期を過ぎた頃からマダラは修業に付き合う事が減っていた。だがそれはクシナにはもうその必要がないと判断したという事を知っていたセンリは、クシナに穏やかに微笑んだ。
『マダラはもうクシナには教える事がないって思ってるんだよ。――あっ、いやいや!ネガティブな意味じゃなくて…教える事がないくらい強くなったって事!』
一瞬クシナが落胆したような表情をしたので、センリは慌てて言い直した。
『だってほら、もうクシナにとやかく言ってくる子達はいなくなったでしょ?』
「うーん…それは、確かに……」
クシナ自身は任務に集中していたので気付かなかったが、以前に比べて敵意を感じる事は本当に少なくなっていた。
『クシナが頑張って、みんなを見返そうって努力したからだよ!』
センリが破顔するとクシナもそれにつられるようにして口角を上げた。
「ありがとう、センリ」
センリが心からそう言っている事は分かっていたクシナは、謙遜することなく言葉を受け入れた。センリの優しさは、相変わらずあたたかいものだった。
「はーあ…なんだかマダラ先生が、羨ましいってばね」
クシナが大きくため息を吐きながら言うのでセンリはどうしたのかと目をパチクリさせた。
『どうして?』
「だって、センリの言葉を毎日聞けるんでしょ?」
『えーっ、なにそれ!』
クシナは本当に羨ましいと思っていたが、センリはあまり理解しておらず、愉しげに笑った。
「それに、センリの面白い顔もすぐ近くで見られるし」
『ハッ、それは……!確かに幸せ者過ぎるね……!?』
センリが真剣な表情になってウンウン頷くと、クシナは大きな声を上げて笑った。
『でも……最近のミナトも、ずいぶんと幸せそうだよー?』
ふと思い出したようにセンリが言うと、今度はクシナの頬がほんのりと赤くなった。最近クシナとミナトは任務のない日は二人で出かけている事が多く、その時のミナトは本当に嬉しそうな表情だ。
「そ、それは…――」
『ふふ、とっても良い事だよ!ミナトにあそこまで楽しそうな表情させられるのは、クシナだけだよ』
「センリ、照れるってばね……」
クシナは口ごもった後、自分で頼んだオレンジジュースを一気に飲み干した。
幼い頃からのミナトの気持ちを知っているセンリにとっては、本当に嬉しい事だった。
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