- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい命-



『ハァ、お酒飲むと余計くどくどが長いんだから……自来也は「マダラ様は二軒目に付き合ってくれんのです」って、悲しそうだったよ。たまには一緒に行ってあげてよ』

「それは行っていいのね、センリ…」

『そりゃあもちろん!楽しい所だよ〜!』


センリがさも当然の事だというふうに言うので、クシナは不思議そうに首を傾げながらもくすくす笑った。


「普通は止めるところですよ」

「そうだ。何故俺がそんな所に行かねばならんのだ…。お前以外の女など塵芥のようなものだというのに……」

『それは言い過ぎ!』


どちらかといえば喜んでもいい場面でなぜか怒ったような反応をするセンリを見て、やはりミナトもクシナも可笑しくなった。


「マダラ先生は本当にセンリの事が大好きなんだから!」

「当たり前だろうが」

「…いや、どっちかっていうとものすごく意外だってばね…」
それにはミナトも同調するようにウンウン頷いた。


「マダラ様は、普段はとても厳しい方ですからね」

「ホント、センリといると別人だからね…」

『そうかな?マダラはいつも怖い顔してるからそう見えるだけで、ホントはとっても優しいよ!ね?マダラ!』

「…お前の前ではそうならざるを得ない」

『またそんな事言って〜!』


相変わらず中々言葉が伝わりにくいセンリだったが、クシナもミナトも、マダラの声が本当に優しげだという事は分かっていた。


「私、二人の関係性が、とっても好きだってばね。私の……憧れ!」


クシナの言葉を聞いて、壁によりかかって腕を組んでいたマダラは少し面食らった。隣に立っているセンリもきょとんとしたが、すぐに微笑んだ。



『クシナってば……』

「だって二人は、お互いが心から大好きでしょう?一番に信頼してて、いつも仲良しで…言葉を交わさなくても心が分かり合える……そういうセンリとマダラ先生の関係性が、私にとってはずっと憧れだってばね」


クシナは無意識に自分の腹を撫でながら、穏やかに語った。


「フン……お前のようなじゃじゃ馬には、難しいだろう」

マダラは馬鹿にしたような口調だったが、その表情は柔らかかった。


「他者を真似る必要はない。人には各々のちょうど良い在り方というものがある…。生きていく内に、自分達に合った形が勝手に創られていくものだ」

『ふふっ、確かにそうだね。いいこと言うね、マダラ!私は、クシナとミナトは息ぴったりのパートナーだと思うよ!ね、ミナト?』

「そうですね。オレも、そう思います」

『私はクシナと結婚した相手がミナトで良かったなあって、心からそう思うよ!ミナトはずっとクシナの事を大切に思ってくれてたんだからね!』

「センリ様、それを言われると少し恥ずかしいです…」


今度はクシナの方が面食らう番だった。それぞれが自分を認め、愛し、励ましてくれるような言葉をかけてくれていると分かり、クシナははにかんだ。ほんの少しだけ、涙が出そうになった。


「まあ、お前にはお前の良さがあるのだろう――俺にはさっぱり分からんが」

「せっかく良い雰囲気だったのに…やっぱりマダラ先生はもう少しセンリ以外の女性にも優しくした方がいいってばね…」

『大丈夫、冗談だよ!私にはマダラの言いたい事が分かるよ…えっ、なになに?そうなんだ!――あのね、マダラは、「クシナは少しお転婆なところがあるけど、それが可愛いところだ」ってさ!なんで分かるかって?何せ心から信頼し合ってる結婚ウン十年目の夫婦だからね!』


朗らかに言うセンリをマダラは睨みつけるように見ていたが、やはりその眼差しには愛おしさが滲んでしまっているように見えて、クシナもミナトも嬉しそうに笑った。


「ハア……お前にはまた説教が必要か…?」

『も〜、“説教”なんて悪い言葉使って!クシナのお腹の子に悪い影響与えたらどうするの!』

「母親に似たら結局説教はする事になるだろう。確実にな」

『やだぁ、そんな怖い事言わないでよ!絶対可愛いんだから!』

「不思議ですね…その光景が目に浮かぶようです…」

「マダラ先生、生まれた子の性格がミナトに似てたらどうなるの?」

「何も言う事はない」

「ウソでしょ!?さすがに対応の差があり過ぎない…?確かにミナトに似たら、優しくて頭も良いかもしれないけど…!」

『あはは!どっちに似ててもきっと素敵な子だから、大丈夫だよ!』



小さな頃から大きな心で、まるで姉のように接してくれたセンリも、厳しい所もあるが何だかんだと言いながらいつでも味方をしてくれていたマダラも、クシナにとって人生からは切り離せないくらい大切な存在の一つとなっていた。

そしてその存在達はきっとお腹にいる子どもにも良い影響を与え、側で見守ってくれる心強いものになるのだろうと、クシナは不思議と確信していた。

これからの未来が、心から待ち遠しかった。

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