木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-新しい命-
「普段は温情主義者で慈悲深く、怒った所など見た事のないお前のような奴が、突然足が竦む程チャクラを荒立てているという状況は胸が躍るものだ」
『余計分かんないよ!』
真剣な顔をし出したマダラにセンリは咄嗟に突っ込みを入れる。
「お前だってよく表裏一体が当たり前だと言うだろう。それと同じ様なものだ」
『マダラって、たまによくわかんない事言うよね…つまり――どういう事だってばね?』
センリはクシナの口癖を真似て問いかけた。マダラはセンリの惚けたような少し幼い表情が愛らしく思えて、センリの喉を擽るように撫でた。
「お前の強さは何十年経っても興味を引く……こんなにも俺を昂らせる事が出来るのは、お前だけだという事だ」
『強さ…?私と本気で戦いたいって事……?』
「確かに…お前の本気を見る事が出来るならば……それは最高の気分だろうな」
『や、やだよ。マダラと殺し合うなんて』
「お前に殺されるのなら、それはそれで良いかもしれんな―――」
『そん―――そんなの、いいわけないでしょ…!そんな悲しい事言わないでよ』
「馬鹿、さすがに冗談だ」
センリの瞳が僅かに揺れ、潤んだのが分かって、マダラはいじめ過ぎたかとセンリの頬をそっと撫で、頭を引き寄せた。
「俺の性格はよく知っているだろう」
『…強い人が好きで弱いヤツは嫌いだとか言うんでしょ』
「その通りだ」
センリはマダラの肩に顎を乗せながら少しご機嫌ななめな声を出したが、マダラは面白そうに微笑んでいた。
『…自分より強いひとに興奮するって事は、柱間にもそう思ってたんだ…』
「それとこれとは話が別だ」
『ほんとにぃ?私より強いひとが現れて、マダラがそっちにいっちゃったら…ちょっと、寂しいな……』
センリは蚊の鳴くような小さな声で呟いた。
マダラはセンリの両頬に手を当て表情を見た。想像していたよりも切なそうな憂いの瞳、そして恥ずかしさから視線を逸らしている照れたセンリの顔を見て、マダラはまた違った満足感を覚えていた。
『私だけ……特別がいい』
センリはマダラと視線を合わせずに呟いた。マダラは無意識のうちにため息を吐いていた。鳩尾の辺りが内側から引っ張られるような、奇妙な感覚がした。
「お前は本当に、可愛い奴だな。本当に……どこかに閉じ込めてしまいたくなるくらいだ…」
『もう…すぐ怖いこと言う……――ん、』
再びマダラが首筋に唇を寄せるので、センリは一瞬ピクリと身体を揺らした。先程噛み付いた箇所が赤くなり、歯型がついてしまっていた。センリの、透き通るような白い肌の上では、異質に見えた。
「お前以外の人間になど…興味の欠片も無い……。俺が、お前しか見えていない事を…知っているだろう…」
『そ、それは――っ…あ、安心した、けど……っ』
「お前の身体を知ってしまったんだ……もう他では…満足など出来ん」
いつもの事ながらセンリの肌はほんのり甘く、欲を誘い出す罠のようにも思えた。
マダラが、肌蹴られた服の間から手を入れて柔らかな膨らみに触れると、センリは分かりやすく跳ね、艶やかな唇の間から吐息が漏れた。
『んん……いっ、!――ま、また歯、立ててるでしょ………っ――』
「大方の動物達は…甘噛みする事が愛情表現だろう……それと同じだ。愛おし過ぎるが故、だ……」
『よ、よく分かんない――――ふ、ぅ』
マダラがセンリの小さな耳朶に軽く噛み付くと、センリは甘い声を上げた。久しぶりに聞いた、鼻にかかった吐息に、マダラはやはり昂りを覚え、今度は少し早急にセンリを押し倒した。
『えっ!、ま―――待って、マダ、ラ……んんっ……ベ、ベッドに――』
「お前が煽ったんだろう?いいから、大人しくしておけ―――いや、だが、声は抑えるな――」
『そん、な、…待って――』
「悪いが、我慢ならん」
マダラは、センリの唇に押し付けられていた手首を掴み、晒け出された肌の至る所に口付けを落とした。センリはまた切なげに眉を寄せ、耐えるような表情をしていた。
「あんなにも恐ろしい殺気を出せるお前が…俺に組み敷かれて……抵抗もなくされるがままになっているという事を思うと…本当に興奮する」
『マダラっ…で、電気―――』
「フッ――お前が本当に嫌だというなら…俺を止める事など、容易いだろう」
『いっ、嫌な、わけじゃ…――』
マダラはセンリの半開きの唇に、小さく口付けた。センリはマダラを見つめ、ほんの僅か、口元を緩めた。
『マダラになら、何されても…許しちゃうよ……大好き、だもん』
初めて心と身体を繋げた日から、センリはずっと同じ感情を抱いていた。それに、センリがそう言うのは、マダラが、本当に自分が嫌な事はしないと解っているからだ。
手放しで信用しているという事が痛い程に伝わり、マダラはセンリの身体を抱き締めるように覆いかぶさった。
「…明日は久方ぶりの休日だろうから、一日中付き合ってもらうぞ」
『えっ、い、いちにち…?』
「お前が愛らし過ぎるのが悪い。それに、これは俺への褒美だろう?まあ、嫌だと言うなら、やめるが……」
『………いやじゃ、ないよ』
「だろうな。知っている」
『また遊んでる……!』
マダラの、押し殺した笑い声が耳元で聞こえ、センリは少しむくれたが、それを拒否する事はなかった。
結局、自分を愛しているが故のわがままは、双方にとってどうしたって愛おしいものだったのだ。
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