木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-四尾の暴走、そして終戦-



それから木ノ葉隠れまでは、途中仮眠を入れて約一日後にはたどり着く事が出来たが、ミナトとマダラ、それからセンリ以外の忍達は疲れきってヘトヘトだった。ミナトでさえ目の下にはうっすらと隈が出来ている。


木ノ葉隠れの阿吽の門を跨ぐと途端に安堵するのはやはりここが故郷なのだからだろう、とミナトは小さく息を吐いた。

センリは共に帰還した忍達の顔を見回して、一人一人名前を確認した。


『――――で――ドウトウくん、マドカちゃん、スイくん…―――よし、みんないるね!』


センリも多少は疲れが残っていたが、全員の無事を確認し、皆を安心させるような微笑みを浮かべた。



「火影様へのご報告はどうしますか?」


ミナトと同じ小隊の秋道ドウトウが問いかけた。こちらもかなり疲弊しているようだった。



「俺とミナトで行く。他の者達はここで解散で良い。充分に休息をとり、身体が回復したら各々火影の所へ行って次の任務を聞け」


素っ気ない口調だが、マダラの言葉を聞いて忍達は安心したように表情を和らげた。


『みんな、本当にお疲れさま。疲れてるだろうから、ちゃんと家に帰って休むんだよ!それが任務ね!』


一人だけ全く疲れを感じさせないようなにこやかなセンリは、未だに里の忍達にとっても不思議な存在だった。


「センリ様、マダラ様、ミナトさん……本当にありがとうございました」


忍達は三人へと感謝の言葉を伝えながら次々に姿を消して行った。
そして最後の一人がいなくなるのと同時に、里内へと続く道の向こうから聞き覚えのある声が聞こえた。



「ミナト先生!センリ様!」


カカシとリンだった。二人とも、ミナトとセンリの顔を見るとどこか泣き出しそうな、そして嬉しそうな表情をした。



「カカシ、リン……。神無毘橋の任務、良くやってくれたね」


二人とも見たところ元気そうで、身体も休められたようだ。師から賛辞をもらうとカカシは一瞬瞳を揺らした。恐らく自分のやろうとした事、そして失敗した事、仲間を怪我させてしまった事…様々な事を悔いているのだろう。
カカシとリンの心の奥底の感情を読み取っていたミナトは、それ以上は何も言わなかった。



『二人とも、体は休められた?大丈夫?』

「はい!」
「もちろんです」


リンとカカシの声は、とても明るかった。



「その様子だと、オビトの奴も無事なようだな」

「はい。すぐにセンリ様の分身体が木ノ葉病院に運んで…色々検査したみたいですが、全く問題無しだそうです。皆驚いていました」


随分と元気を取り戻した様子のカカシが、いつものようにきっちりとした口調で説明をした。



「今は薬ですやすや眠ってます」

あの時の恐怖からはすでに抜け出した様子のリンが穏やかに言った。



『さすがオビトだね!じゃあ起きたらクシナからのゲンコツ百連発かな?』


センリが朗らかに笑うが、カカシとリンは何やら神妙な表情で目を合わせていた。



「クシナさんなんですが―――――」

「――――!」



カカシが何か言おうとした時、ミナトとマダラがふと気配を感じ取った。道の先からそのクシナが全力疾走してきている。



「センリーっ!!!」

『クシナ、ただい―――――ぅっ』


出迎えに来てくれたのかと、センリは手を振ったが、そんな事はお構い無しにクシナが突っ込んできた。とてつもない勢いで抱き着いてきたクシナを、センリは何とか抱きとめた。
今ではセンリより十センチ程高くなったクシナは、センリの首に手を回して力の限りぎゅうぎゅうと抱き締めた。



「センリ……!本体ね!?ああ、良かった無事で――本当に良かったってばね―――!!」

『ク、クシナ、』

「そこはオレじゃないのか……」



クシナは今にも泣き出しそうな勢いだ。ミナトはクシナの行動に無意識の内に突っ込みを入れる。クシナの勢いに、マダラは顔をしかめていた。

首を締め上げられているセンリは苦しさに抗いながらクシナの背中をトントンと叩いた。



『だ、大丈夫だよ、クシナ……』

「私――っ、本当に心配して…!怪我したの?」

『しっ、してないから、大丈夫だよ…!』



クシナは、センリの右腕の服の部分がなくなっている事に気付いてあたふたした。一日前は重傷を負っていたが今はなんの問題もないので、センリの言葉も嘘ではなかった。
しかしクシナのあまりの心配ぶりにミナトは少し引き気味だ。



「そんなに心配してたの…?」


ミナトが苦笑いで呟くと、カカシがミナトとマダラにそっと近付いた。



「実は……オレ達が帰ってきた時、センリ様の分身体も一緒だったんですが――ちょうど今みたいな物凄い勢いでクシナさんが抱きついた瞬間、センリ様の分身体が消えてしまって……。それで、クシナさんはセンリ様の本体の方に何か重大な事があったのではないかと考えたようです…」

「なるほど……」

「短絡的過ぎるな」

「センリ様なら大丈夫でしょうと何度か説明したのですが…」



カカシの説明を聞いてミナトは苦笑いを浮かべ、マダラは呆れていた。

センリの光分身体は、写輪眼であっても本物と見分けがつかないくらいに精密なチャクラの流れを作り出せるが、他者からの物理攻撃には極めて弱い。
消える時に発光する目くらましが目的なのでそう作られているが、今回はクシナの抱擁を攻撃と捉えてしまったようだ。分身体が消える時は主に本体にも何かしら異変があった時なので、クシナは不安になったようだ。
この所クシナは体調不良が多かったりしていたので任務にはあまりついていなかった。戦場にも派遣されていなかった為余計心配心が大きくなっていたのだろう。

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