木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-死した白い牙と新たな世代-
「センリ……良い事があったからと、随分図に乗っているな?」
『だって…おじいちゃんになる度にマダラ、意地悪言ってくるんだもん。たまには調子に乗らせてよ』
センリは小さな子どものようにいじけて、唇を突き出した。マダラは猪口を置いてじーっとセンリを見つめた
「……まあ…別に図に乗っていても、良いか」
『え、ホント?い、いや、そもそも許可を貰う事じゃないんだけど…!』
マダラの言葉に納得しそうになり、センリは慌てて首を横に振った。マダラは余裕そうな笑みに戻っている。
「いい気になっているお前を組み敷いて解らせるのも、面白いだろうからな」
『……』
言葉の真意は分からないが、マダラの笑みから良くない雰囲気を感じ取ったセンリはマダラの顔を見返した。
『解らせる、って…?』
「調子に乗って主人に逆らう犬は、きちんと躾け直すだろう?それと同じだ」
『い、犬!?私の事犬だと思ってるの!?』
センリの表情の変わりようが面白くてマダラは小さく笑いを漏らした。
「いや、心から愛おしい人間だと思っているが?」
『なぁんだ、そうなんだ。安心したよ!――――ってイヤ!騙されないからね!』
くるくる変わるセンリの表情は、何十年経っても見飽きる事がなかった。
『く、くぅ………あんまり馬鹿にしてると飼い犬でも噛み付いちゃうんだからね……』
「ほう、それもいいな。そんな事をすればどうなるのか、嫌という程身体に教え込んでやれるからな」
『すぐそういう話になる……!マダラのすけべ!』
「じゃあ俺に押し倒されて悦んで、毎度のようにいやらしい声を上げているお前はそれより余程の助平じゃないか」
『そっ――そん、…―――』
酒を飲んでいるのは自分だけだというのに、白い陶器のような肌を赤らめていくセンリが本当に愛おしいと思っていたマダラは、楽しそうに目を細めていた。
『ウゥ……大人になってからは全然マダラに勝ててない気がする……言葉の勝負では……』
「当たり前だろう。“それくらいしか”お前に勝てるものがないのだから。あとはまあ、ベッドの上でも、か」
マダラはフン、と鼻を鳴らしたが、怒っているわけではなくむしろ楽しげだった。
『それは勝つ勝たないの問題じゃないんじゃ…?』
「そんな事はない。先程のように図に乗っているお前を打ち負かすという意味では変わりないだろう」
『まっ、負けるものか…!』
「そうやってやる気になるのはいい事だぞ、センリ。その方が屈服させた後の喜びが大きいというものだ…」
『……っ…――』
マダラが手を伸ばし下唇を親指の腹で押し付けるように撫でてくるので、センリはピクリと身体を揺らした。眉を下げ、上目遣いで視線を寄越すセンリを見て、マダラは征服感のようなものを覚えていた。床に座り込みソファーに座るマダラを見上げるセンリは子犬さながらだ。
「お前にそんな表情をさせる事が出来るのは、俺だけだな」
マダラはゆっくりとセンリの唇を撫でながら言った。センリは恥ずかしくなって視線を下に逸らした。
『そっ、それは、そうでしょ………』
「ふっ…お前は自信満々になっているより、そういうふうに俺の下で恥じらって鳴いているのが一番似合う」
『……マダラ…今すっごい意地悪な顔してるって、自分で分かってる?』
頬を撫でる手を止める事はしなかったが、センリは少し焦ってマダラに問いかけた。
「そうかもしれんな。興奮しているのだから」
『!?――ま、待って、と、とりあえず!とりあえずご飯は最後まで食べよ!?あとちょっとなんだから!あとお風呂もね―――!?』
ベッドの上で自分を押し倒してくる時の表情を読み取り、センリは焦ってマダラの手を引き剥がした。
マダラはくく、と抑えた笑いを零した。赤らんだ顔で残りの赤飯を食べ始めたセンリを、マダラは頬杖を付きながら眺めていた。
「いいぞ、センリ。早く食え。そのままさっさと終わらせろ」
『(嫌な予感しかしない……)』
センリは黙々と食べていたが、マダラの微笑みには違和感を抱くのみだった。
「ああ………早くお前を抱きたい」
『っ…――!ゲホッ…や、やめてよ、食べてる時にそういう事言うの…!』
「それは悪かったな。じゃあ……早くお前を組み伏せて、その顔を快楽で滅茶苦茶にして、はしたない声しか出んようにして――――」
『マダラ……!』
センリはこの間のミナトとクシナとの会話を思い出した。“何でも口に出して”伝えてくれるのはセンリにとってとても喜ばしい事ではあったが、同時に途方のない羞恥心にも侵される事になっていた。
『(くぅぅ……私だっていつか、絶対見返してやるんだから……)』
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