木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



里が落ち着いてくると、それと比例してカルマとの術の縛りが弱くなり外に呼び出す事が出来た。そこでセンリは戦争中、雨隠れであった事を話して聞かせた。

長門の輪廻眼の事を話すとカルマも考えるように唸っていた。



「正直なところ、我はこの地での特殊な眼についての知識がそこまである訳では無い……もっとハゴロモに聞いておくべきだったか……」


その事についてはセンリも思い残している事の一つだった。カグヤから産まれ、眼についても色々と調査していたハゴロモならばこの世界の力の殆どのカラクリを知っていただろう。



『そうだね……。でも、輪廻眼はハゴロモの六道仙人の力……つまり、千手一族とうちは一族のどちらの血もひいていないと開眼しないよね?長門はうずまき一族の血は引いていたけれど……。長門は“両親以外の家族は知らない”って言ってたし……長門が幼いうちに殺されてしまったから、そのご両親がどうだったかも分からないね』

「その憶測は的を得ていると思う。その子どもがうずまきの他にうちはと千手の血を引いていると考えれば有り得るかもしれぬが……」


以前会った時に長門にもう少し詳しく聞くべきだったかとセンリは思っていた。だが彼らが言っていたように今も活動しているなら、それ程遠くない内にまた会えるだろう。



「でなければ移植したとも考えられるが……」

『なるほどね…。お父さんかお母さんのどちらかが開眼して……それでその後開眼した輪廻眼を長門に移植した、とかも有り得るのか…。あんなすごい力を持ってる眼を移植できるのはかなり限られた人だと思うけど…長門は確実にうずまき一族の血を引いていたから、それは可能だろうね』

「少なくとも我が御主と離れていた時に、輪廻眼を持った人間は見なかった。あれは相当に強い力を持った者でなければ開眼できぬだろうからな」


センリにもカルマにもなぜ長門が輪廻眼を有しているのか確実な答えは分からなかった。


「しかし……その者に忍術と生きるすべを教えたのは御主なのだろう?それならば人々をいい方向に導いてくれるだろうと思うが……」

『うん。長門は本当に心の優しい子だったし、側には弥彦も小南もいる。何が平和をもたらす事が出来るのか、あの子達はちゃんと分かってくれたよ』


センリの話を聞いても、カルマはそれ程心配していないようだった。


「それならあまり心配する事もないであろう……。今の世では輪廻眼は、“世界が大きく変動する時に開眼される”などと言われているが……。

それはいい方向に変わる時でもあると、我は思う。ハゴロモがそうであったように……。それにその少年が万が一に外道魔像を口寄せ出来たとしても、その謎までは分かるまい。この世界には無限月読のやり方などは伝わっておらんし、うちはの石碑も御主が取り消した。輪廻眼の力をいい方向に使ってくれると信じ、様子を見て過ごすに限るな」


確かにそうだとセンリは頷く。
相当な力がない限り外道魔像は口寄せなど出来ない上、もし口寄せ出来てもその用途までは分からない。どちらにせよセンリは平和を望んでいた長門が輪廻眼を戦いの要素にするとは思えなかった。


『もしも何か噂で聞くような事があればまたすぐに雨隠れに行く事にするよ。田舎の方の村にはこれからも何度か行くだろうし……』

「そうするのが良いだろう。もしもその少年がガマ丸の予言の子だとしたら、きっといい方向に導いてくれるだろうからな」


カルマもガマ丸の予言に関しては深く信じていた。


「あとは尾獣達の扱いが変わるといいのだが。今の時点では無理そうか…うずまきミトはクラマと分かり合えなかったようだしな」

カルマが深くため息を吐いた。


『そうだね……それ以降もちらほら尾獣たち……というより、あの子達を封印された人達の噂を耳にしたけど……もし戦いに利用されてるならどうにかしたいものだね』

センリは悲しげに眉を下げた。


「猫又と牛鬼はそれなりに封印された人間とやっていけているようだったが……」

戦時中、時たまではあるがカルマが実体化し、混乱に紛れて他の尾獣たちの様子をそれとなく見てきて貰っていた。穆王の人柱力が尾獣化し、手に付けられなくなっていたところは収めて来たと話していたが、中々にセンリとカルマを悩ます種でもあった。


『あの子達には辛い思いばかりさせて本当に悪いよね……』

「我も人間や尾獣達に警告はしているが…。誰であっても現状ではあ奴らと理解し合うのは難しいかもしれんな。しかし…尾獣達には何とか苦しみを乗り越えてほしいとも思っておる。五国に尾獣を住まわそうと提案したのは我だ。心苦しくもあるが、今は手は出せぬ」


カルマは珍しく悩ましげな顔だった。センリは力強く頷いた。


『もしもクラマと接触出来そうなら必ずそうする。勝手な思い込みになっちゃうけど……絶対、尾獣たちと人間が分かり合える日は来ると思う』

「その通りだ。ハゴロモもそれを信じて奴らを世に放ったのだからな…。その時がくれば、何故これまで耐え忍んできたのか、必ずあ奴らにも分かると信じている」


カルマもクラマの事は心配そうだったが、センリに里の事共々託し、また体の中に消えて行った。


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