- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



『牛鬼と又旅が暴走した時に止められる護符を作って、雲隠れに送るよ』


マダラから意地悪げな表情が消え、変わりに疑問そうな色が見えた。


「護符?そんなものが作れるのか」

『護符って言ってもチャクラを封しておくだけで出来るの。それを暴走してしまった人の体のどこかに貼り付ければ、尾獣のチャクラと反応してそれを吸い取ってくれるんだ。いつも何枚か持ち歩いてるけど、ミトには使う機会がなかったから』


センリは小さく微笑む。センリの力の底知れなさと思いがけない行動を知り尽くしているマダラは、それ程驚きはしなかった。


「全く、お前は本当に昔から言う事が変わらんな。まあ、それを雲隠れが信用して使うかは分からんがな……好きにすれば良い」


センリの行動には人の心を変化させる不思議な力がある事も分かっていたマダラは、悪くない方法だと思った。


『ありがとう!ヒルゼンにも言ってみるね』


心から賛成出来なくとも、こうして本心からの感謝を見せられてはマダラも何も言う事は出来なかった。


「……尾獣が心配か」


牛鬼と又旅、というのが一瞬なんの事か分からなかったが、その後すぐに尾獣の名前かと気付いたマダラが問いかける。センリはふと窓の外に視線をやった後、小さく頷いた。


『少し心配かな。あの子達に「人間を信じてほしい」って言って連れてきたのは私だし…。あの子達も人に危害を加えたい訳じゃないから、余計難しい』


センリの表情はまさに子を思う母親のそれで、そこはカルマと変わりはないのかとマダラは改めて思い出した。


「あの畜生共の身をそれ程案じるのは、お前くらいだろうな」

『ち、畜生!?ま、まあ人間以外は畜生とも言うけど……うん、マダラ語録だね……』

「事実だろうが」


マダラの相変わらずの高圧的な物言いにセンリは目を瞬かせたが、そこに敵意や悪意があるわけではないので、咳払いする事で受け流した。



『とにかく……尾獣達の事も周りの人も心配だから、他に尾獣がいるところにも護符を送るようにしてみるよ。受け入れてくれたら、だけど…』


そんな考えでいては直ぐに付け込まれる、という考えがマダラの頭の中に無かった訳では無いが、それを口に出す事はなかった。センリの強さはよく分かっている。そしてその優しさがもし拒否されるような事があっても、センリが決して人を信じる事を諦めない事もよく分かっていた。


「(まあ、俺自身がそういう所に惚れ込んでいるのだからな……)」


“先の未来”を見るには、センリの存在はなくてはならないものだ。そしてその存在を守る為にも、共に生きていく為にも、マダラ自身もまた光に照らされる事を望んでいた。



「………この一件が一段落すれば、次は九尾の移動だ」


マダラが思っていた通り、センリの眼差しの強さが、変わる事はなかった。



『うん……分かった』


窓から見える景色は青々と彩られ、新しい時代を呼び込む青葉の季節は、すぐそこまでやって来ていた。

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