- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



クシナ誘拐未遂事件については攫われた本人が無事だった事、国境をまたぐ前にミナトが雲隠れの忍を倒した事によってそれ程大事とはならなかったが、事件に関してセンリは気になる事があった。


『なるほど、やっぱりクシナの強い封印力を狙って……。って事は尾獣との関係が上手くいってないって事?』

「いや、そういう訳でもないようだ。むしろ雲隠れは尾獣の扱いが上手くいっている方だ。ただ木ノ葉隠れと違って稀に暴走する事があるらしく、人柱力の管理力を強化する為に、うずまき一族の力に目を付けたのだろう」


雲隠れの忍達がクシナを攫おうとした理由を聞かされてセンリは少々動揺していたが、マダラの言葉を聞くと少し安堵もした。


「幸いミトは九尾を暴走させた事はないが、並大抵の人間では尾獣を抑え込むのは中々難しい」


里創立当初から渦潮隠れとは同盟の関係にあり、優れた人材も多数存在しているうずまき一族はやはり他里から見ると欲する存在でもあった。



「雷影にもすぐに連絡をしたが、あちらは一応詫びを入れてきた。戦争を終わらせたばかりで事を荒立てたくないのもあるだろうが…」

『三代目雷影は割と話が分かるってマダラ言ってたもんね。でも、クシナの連れ去りを命じたのは雷影だよね?尾獣と人間が共存していく為に、里の為にっていう気持ちがあるのは良いことだけど、それでもやり方がやり方だからね…ヒルゼンはどうするって?』

「制裁は無しだ。口頭での厳重注意処分に留めた」

『そっか。マダラはちょっと反対すると思ったけど』


センリが少し困ったように眉を下げながら言うとマダラの方は眉を上げた。


「もちろん俺としてはもっと厳しい措置を取るべきだと言ったがな。他里への不法な侵入に加え誘拐未遂だ。一歩間違えばまた戦争への火種にもなる。しかし…こちらに被害もなく、雷影の方から謝意を表したとなれば、事を荒立てるのは避けたいというヒルゼンの見解も分からんでもない。まあ……子どもの忍に挫かれ作戦もこちらに露見したとなれば、実行した奴らにとっては雲隠れに帰ってからがむしろ問題かもしれんがな」


これが本当に拉致問題に発展していたら全く状況は違っただろうが、確かにクシナが無事だというのは大きいだろう。腕を組みながら少々呆れ気味なマダラをセンリは見つめていた。


「………なんだ」


キラキラとした瞳が嫌に見上げてくるのでマダラは不思議そうにセンリを見返して問いかけた。


『マダラ、なんだかすごく落ち着いて考えられるようになったんだね』


予想外の言葉に、マダラは面食らったが、すぐにその言葉の意味を呑み込み眉をピクリと動かした。


「お前…こんな時まで俺をガキ扱いか?」


マダラの声音が少し変わったのでセンリは慌てて胸の前で手を振った。


『ち、違うよ!そういう事じゃなくて…!ほら、マダラって意外と感情豊かだし、容赦ないとこあるでしょ?子どもの頃からすぐ「なんだとコラ柱間!」って言ってたし……でも今は感情で動くわけじゃなくて、ちゃんと先の事…木ノ葉の事を考えて、ヒルゼンや他の人を信じて任せてくれるようになったというか……――――』

「そう言う事を“ガキ扱い”というんだが?」


センリは必死に説明するが、マダラはますます不機嫌そうに眉根のシワを深くさせた。


『違うってば!マダラがそういうふうに考えてくれるようになった所が、素敵だなって事だよ!もっと大好きになるなって思ったの!』


勘違いされては困るとセンリは一生懸命だった。しかめっ面だったマダラだが、センリが好意を伝えた事によりそれ以上の文句は言わなかった。


「……まあいい。その事についての陳謝は後々ゆっくり聞くとしよう」


思ったよりも怒っている訳ではなさそうだったマダラだが、いつものような意地悪げな表情を浮かべたのを見てセンリはアハハ…と渇いた笑いを零した。


『そ、それはとりあえず置いておくとして……』



嫌な予感がセンリの背中を駆け抜けて行ったが、今は自分の後々の運命より気にすべき事柄がある。
[ 13/169 ]

[← ] [ →]

back