木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-新しい時代と人柱力-
ヒルゼンのところにミナトと共に報告に行き、クシナを誘拐しようとしたのは雲隠れの忍達三名だという事が分かった。
感知結界に気付かずに木ノ葉に侵入した事、ミナトがクシナを助けた時それ程戦闘力が無かったという事を踏まえるとそれ程実力の高くは無い、中忍レベルだろうと考えられた。
「ミナト、お手柄じゃったな」
「今日のところは家に帰って良い。センリ、ミナトと一緒に行けるか?」
『うん、分かった』
ヒルゼンとマダラの意味有り気な視線に気付き、センリはミナトを自宅に送る為に共に帰る事にした。
雲隠れに連絡をし、詳しい事件の真相を突き詰めているのだろうとは分かっていたが、センリは少し違う事が気に掛かっていた。
『ミナト、どうしてクシナのところまで行けたの?偶然雲隠れの人達を見つけて後を追った、って言うのはちょっと違うんじゃない?』
センリがミナトに問い掛けると、どうして分かったのかと言いたげに青い瞳が開かれた。そして観念したように苦笑した。
「髪です」
『髪?』
ミナトは観念したように口を開き、センリはその言葉に首を傾げる。
「クシナが自分の髪を少しずつ落としていっていたんです。それに気付いて辿って行ったんです。そうしたら雲隠れの忍達がクシナを連れていく所で…」
『なるほどね。クシナが自分の髪を目印にしていってたんだね』
「はい」
ただでは連れて行かれないクシナの機転の利いたやり方と、それに気付く事ができたミナトの実力には感心せざるを得ない。
しかし何故それをヒルゼンには言わなかったのか少々気になったが、クシナは無事で雲隠れの連中も倒してきたので、ミナトは特に報告無用と判断したのだろうと勝手にセンリは結論を出した。
「それで…オレ、少し分かったんです。前にセンリ様が言っていた事」
『?』
前を向いて歩きながらミナトが言うのでセンリは満月の光で少しくすんだ黄色の髪を見る。
「センリ様に、“言葉にしないと伝わらない事もある”って言われてから、ずっと考えていたんです。それってどういう事なんだろうって……でも今日、ようやくその意味が分かった気がするんです」
センリを見るミナトの表情は晴れやかで、それはクシナを連れ戻すという任務に成功したからだけではないように見えた。
「クシナの髪にはすぐ気付きました。綺麗な赤い髪だから……」
月光でミナトの瞳がキラキラと輝いているように見えてセンリは薄く微笑んだ。
「クシナに“いつもは助けてくれないのに”って言われて…それは君が強い人だと分かっていたからって言ったんです。それを伝えた時のクシナは、すごく驚いてて…でも嬉しそうでした」
クシナの照れたような面持ちはそういう経緯があったのかとセンリは納得した。
『そっか。クシナも分かってくれたんだね』
「はい。センリ様に言われて、気付いたんです。自分がいくらそう思っていたとしても、クシナには伝わっていなかった。自分が思っている事を相手に理解してもらう事って大切なんだなと分かりました」
センリは自身も嬉しくなって、目線より少し高い位置にあるミナトの頭をワシワシと撫でた。
『偉いね、ミナト!これできっとクシナも分かったと思うよ、ミナトの想い!』
「セ、センリ様、」
ミナトは焦った様にオロオロとしていたがセンリの心からの笑みにはにかみを返す。
この一件はクシナとミナトがお互いの思いに気付く、大切な一歩にもなった。
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