木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-新しい時代と人柱力-
青葉が芽吹き始めた頃、ミトがクシナへとクラマを移そうと計画を立て始めた時だった。
ある日の夜、クシナが何者かに攫われるという事件が起きた。
センリがその日の約束の時間にクシナが現れなかった事により自宅に向かってみると、使用人は全員気を失っており、クシナの姿だけが見当たらない。
辺りには微かに人の気配があり、状況からしてクシナを連れ去る事が目的で、そしてそれが起きてからまだそれ程時間が経過していないように見えてセンリはすぐにヒルゼンに報告に向かった。
ヒルゼンも木ノ葉の感知結界に不振な反応があったと報告を受けており、すぐにクシナ捜索の為の準備がなされた。
満月の夜だった為にセンリは無茶に深追いはせず火影への連絡を最優先にしたが、その後その必要はあまり無かったと気付く事になる。
「波風ミナトがクシナを連れ戻した」
ヒルゼンの口からそう聞いたのは、センリがクシナが行方不明になったと気付いてから僅か二時間後だった。火の国から出る前にミナトはクシナを木ノ葉隠れに連れ帰って来ていた。
ヒルゼンが暗部の忍を派遣し、センリもカラスを使ってクシナの捜索を始めようとしていた矢先の発見だった。あまりにも早い報告でセンリも驚いてはいたが、その理由はその後すぐに分かる事になる。
『クシナ…!』
ミナトと共にクシナが木ノ葉に連れてこられてすぐに、センリはその姿を見て駆け寄り抱き締めた。クシナは少し驚いたように固まっていたが、その体には傷の一つもなく無事だという事を確認してセンリが体を離す。
『大丈夫だった?怖かったよね…早く気付けなくて、ごめんね』
センリは申し訳ない気持ちでいっぱいで眉を下げていたがクシナは至って元気で、しかも何故か少しだけ照れた面持ちだった。
「ミナトが…助けに来てくれたんだってばね」
『そっか…ミナトが』
ミナトの方にも怪我は無く、いつもの穏やかな笑みを浮かべていた。
「はい。火影様の話を聞いて、すぐにクシナを探しに行ったんです」
『そっか。ありがとうね』
ミナトは心なしか自慢げで、クシナを無事に連れ戻せた事に安心しているようにも見えた。
『怪我がないならクシナは暗部の人と一緒にお家に帰っていいよ。これから数日は見張り番がつく事になると思うけど…。他の家の人も無事だから安心して。報告は私とミナトで行ってくるから』
「でも、」
『大丈夫。早く帰ってお家の人を安心させてあげて』
一度迷ったようにセンリを見たクシナだったが、しばらくして頷き、自宅に向かって帰った。
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