木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



『ふふ、そんな事があったんだね』


そんな事があったとは知らなかったセンリはマダラを見て楽しげに笑った。


「そうそう。せっかくの私の休日にまでちょっかいをかけてくるから困ってたんだけど……マダラ先生が来て顔見た途端、あいつらってばあたふたして…あの情ない顔を思い出すと……クフフフ…!」


悪女さながらの意地悪顔でニヤニヤするクシナとマダラの悪人顔は、かなりいい勝負だった。


「途中足が絡まって転びながら退散していくのは実に惨めだったな」

『そりゃマダラみたいな人が突然現れて睨んできたら逃げたくもなるよ』

「あいつらにはちょうどいいんだってばね!」


クシナはまるで男の子のようにやんちゃな口調で言った。

自分への風当たりが強い事に気付いていても、クシナは絶対に挫けたりする事はなかった。センリもマダラもクシナが気に入っていたし、クシナの方もとても頼りにしていた。



「……っと、そういえば今日はお父さんが早く帰ってくるんだった…―――じゃあ、私は行くってばね」


日が落ちてカラスが鳴き始めた事に気付いたクシナがハッとして言った。


『一人で大丈夫?』

「センリは心配しすぎだってば!大丈夫。マダラ先生、今度絶対にまた教えてね!」

「時間が取れたら付き合ってやる。お前も早く下忍としての生活に慣れる事だな」

「はい!先生!」

『またね!』


クシナは元気よく返事をして、走ってセンリ達の家を去って行った。クシナの赤い髪が夕陽に照らされ燃えるような赤色になっていた。



『クシナはマダラの事がとても好きみたいだね』


センリは足をぶらぶらさせながら嬉しそうに笑を零した。


「ミトが余計な事を言って聞かせているのだろう。まあ、あいつにはもう少し落ち着いてほしいものだがな……」


そう言って茶を飲むマダラの目が、とても優しい事にセンリは気付いていた。


『それがクシナのいいところだよ!素直で真っ直ぐでお転婆で…とっても可愛いんだから』


センリがまるで姉のような表情をするので、ついマダラは小さな微笑みを浮かべた。


「お前は本当に子どもが好きだな」

『そりゃあね!だってみんながそれぞれとっても可愛くてさ……―――』

「それは、俺にはあまり分からんな」

『そうは言ってもマダラだって気に入った子は可愛がってるじゃない。そういう事だよ!』

「そんな事はない。俺にとって、この世で何よりも可愛らしいと思うのはお前だけだからな」

『なっ、』

「お前以上に愛らしいものなど、生まれてこの方見た事がない」


マダラは湯呑みを置き、いつものようなニヤリ笑いを浮かべた。センリが照れているのを見て面白がるのはマダラの趣味のようなものだった。

センリの澄んだ瞳が見開かれ、それから徐々に恥じらうような表情に崩れていく様は何度見ても愉快で、マダラの好奇心をくすぐるものだった。



『そっ、れは……――それは、そう言ってくれて、嬉しいけど……』

「おい、どこを見ているんだ。こっちを向け。ほら――その世界一可愛らしい顔を見せてみろ」

『そ、そういうの、ホントひ恥ずかしひから……』


赤くなった頬を隠そうと目を背けるセンリの顔を掴み、マダラは自分の方を向かせた。夕焼けに照らされているので赤味は分からなかったが、センリの照れている、どこか泣き出しそうな顔を見てマダラは満足そうに笑った。


『ミトとかクシナはマダラの事優しいって言ってくれてるのに……いや、マダラは優しいけど…私にはなんかそういう意地悪が多くない…?』

「お前が「意地悪して下さい」という顔をしているのが悪い」

『そ、そんな顔してないよ!』

「いや、している。ただ、俺以外の人間の前では絶対にそんな顔をするな」


センリはじっとりした目でマダラを見る。たまには意地悪し返した方が良いのかもしれない。


『……………もししたら?』

「屋敷の地下に監禁して二度と表には出さん」

『かっ、―――――』


センリが驚いて目を丸くさせると、マダラはその首元に手を伸ばし、首筋を手の平で包むように優しく撫でた。センリは思わず体を硬くさせた。


「お前の、この白くて細い首には善く映えるだろうな…首輪が」

『く、首輪?アハハ………―――ウソだよね??』

「さあな」

『…………』

「……馬鹿、本気にするな。冗談だ……――一割くらいは」

『だよね!…って一割!?きゅ、九割本当なの!?』

「嘘だ」

『どっ、どっち!どっちなのマダラ!』


意地悪そうに目を細める自身に焦って詰め寄るセンリの姿はやはり愉快で、マダラは満足したように笑っていた。
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