木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



驚くべきスピードで忍術を会得し、特に風遁忍術に関しては自来也をも超える程だったミナトは、自来也班から独立した後には任務にも精を出していた。

冷静さをかくこと無く毎度の任務をこなし、他人への思いやりも忘れず、目的を最後までやり遂げる根気強さもミナトは持ち合わせていた。マイペースなところもあったが、会えば爽やかな笑みを浮かべてきちんと挨拶をする、礼儀正しい子どもでもあった。

マダラに言わせるとミナトは「自分より強い忍を恐れず、尚且つ媚びない」珍しい忍の子との事だ。

マダラは自分がほとんどの忍に恐れられているという自覚はあり、それによって自分に媚を売る者を心底嫌っていたが、どうやらミナトはその質がないらしい。由緒ある一族の出というわけではなかったが、自来也も目を掛けている弟子という事もあり、マダラも僅かに期待をしているようだった。



クシナも三人一組の班内では特に揉める事なく修業に取り組んでいたが、やはりミナトとの仲は相変わらずだった。

ミナトはもしかするとクシナに近づきたいのではないかとセンリは考えていたが、如何せんクシナの気の強さがそれを邪魔していた。



「あの人はいつもいつも私の喧嘩を見てるだけだったから、きっと私の事が嫌いなんだってばね!」

『それはどうかな?ミナトが自分でそう言った訳じゃないでしょ?』

「言わなくても、絶対そう思ってるんだってばね!」


クシナの頑固さも然る事ながら、ミナトの“人の力を信じて見守る”行為が裏目に出てしまっていた。

センリと話す度にミナトの事を「助けてもくれない頼りない人」と話しているクシナに毎回のように言い聞かせていたが無理矢理信じ込ませるような事はしなかった。


『(ミナトは頭が良いからすぐに分かってくれると思うんだけどな……そしたらクシナもすごく救われる………もう少し大人になったら気づいてくれるかな)』


センリにしても十二歳はまだ子どもだからという思想があり、自分の歳より少しでも低ければ子ども扱いをしてしまうという難点があった。

マダラとしては十二歳はもう子どもではないという考えの為いつも「お前は甘過ぎるんだ」と言われているセンリだったが、その性格だけは直らなかった。


終戦間際からはマダラは戦に出る事はなく、主に里で相談役としての仕事をしていたが、本物のセンリが戻ってきてようやく心から落ち着いたという感覚になっていた。


『ミトはクシナがもう少し下忍として慣れたら、クラマを移すって』

「分かった」


縁側に座ってお茶を飲みながら話していると、センリも「帰ってきたのだ」という感情が込み上げてきていた。



『クシナの方も分かってるみたいだから…。あの子は頑張り屋さんだけど、分裂体が言ってたような事があるとちょっと心配だな』


マダラもあの一件やクシナを取り巻く環境は知っていた。


「ミトやお前がいるんだ、あまり心配はいらんだろう。それにあの性格なら、そのうち周りの方が音を上げるだろうしな」


マダラの方はあまり心配はしていなかった。

ミナトもそうだが、それよりクシナの方が「強い相手も恐れない」精神力は一枚上手だったからだ。
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