- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-新しい時代と人柱力-



『クシナ、大丈夫?』


センリは座り込むクシナに手を差し伸べて、優しく引っ張り起こす。


「あ、ありがとう……センリ…」


クシナは袖で目を拭いながら立ち上がる。センリはクシナの服についた土を払った。クシナは悔しさより、センリが突然現れた事の方に驚き、少し面食らっていた。


『髪、痛かったでしょ。ちょっとちぎれちゃってるな……後でちゃんと整えようね』

「…うん」


センリは地面に散乱した髪とクシナの長い髪を見比べて優しく言った。センリの顔を見てクシナは安堵し、少し元気が出てきていた。


「…!」


するとクシナはふと桜の木を見上げた。

そこにはミナトの姿があって、それに気付いた途端クシナの表情が険しくなった。


「あなたはいつもいつも見てるだけ……私がよそ者だから、助けてもくれないってワケね!」

「…!ボクは……」

「よそ者だって、あなたもそう思ってるんでしょ!」


怒ったクシナはミナトの言葉も聞かずにまくし立てて、センリの腕を引っ掴んだ。


「行こう、センリ」

『…クシナ…!』


センリはクシナに引きずられるようにして歩き出し、ミナトを振り返った。


「……」


ミナトはその様子を黙って見送った。ミナトの頭の中にセンリの言葉が蘇った。


「(言葉にしないと……伝わらない事…)」


春風が桜の木を揺らし、舞い降りてきた花びらがミナトの頬に触れて飛んで行った。



――――――――



『うーん、ミナトはとても賢い子だけど、なかなかクシナに伝わらないみたいだね…』


ミナトやクシナ達は戦争には参加はせずにすんでいたのでその点はまだ良かったが、センリがいない間里で生活する中で、様々な事があったようだ。


その一件があった後、終戦直前にはミナトは中忍に、クシナは無事にアカデミーを卒業して下忍になったので二人にあまり接点はなかったが、自来也はたまにミナトとも手合わせをする事があった。


「あの自来也が、ガキ共の指導をする側になっている事自体驚きだがな」

「ハハハッ!覗きだけに力を入れていた訳ではありませんよ!」


マダラが放った言葉に、自来也は大きく笑った。


『師弟の関係はいいよね。ミナトも自来也の事すごく好きだしね』


ミナトといる時の自来也は楽しげだったし、それを見ていると弥彦達の事を思い出した。恐らく自来也も同じだろうとセンリは知っていた。


「ワシの方が子ども達から教わる事も多々ありますからのォ。面白いモンです」

「まあ、そうだろうな。特に波風ミナトはアカデミーにいる時から抜きん出て賢かったから、お前より頭も良いだろうしな」

「それは否定できませんのォ………」

『そうそう!ホント、ミナトは私よりもずっとずっと頭良いからね!この前も木ノ葉の正門の“あん”の意味を教えてもらったし』

「………それはどうかと思うが」

「ハッハッハ!センリ様が今まで知らなかったとは!」

『えっ、自来也知ってたの?すごいね』


自来也とセンリとマダラの関係は良好で、滅多に他人に気を許さないマダラでさえ自来也の前では表情を崩している。

小さな事は気にせず、豪快で馬鹿な自来也は柱間と少し似ていたし、あまり立場を気にしないので一緒にいて気が楽だった。
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