木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-新しい時代と人柱力-
クシナの後を少年が追いかけ、センリもその後から着いていく。ミナトのように少し様子を見ようと思ったが、その少年が突然クナイを放ち、危うくクシナに刺さりそうになったのでセンリは少し注意して観察した。
『!』
投げたクナイは本物だったが、それに驚くより先にクシナが方向転換し、少年に重いラリアットを御見舞した。
「うっ!?」
少年が地面に叩きつけられるのが見え、センリは立ち止まったが、それはボンと音を立てて丸太に変わった。変わり身の術だ。
「!」
クシナが驚いていると後ろから少年が現れ、その体を蹴り飛ばす。クシナは前のめりに地面に倒れ、少年は後ろから長い髪を無理矢理引っ張り上げた。
「変わり身の術に気付かないなんて、まだまだガキじゃん」
クシナは何とかしてその手を離そうともがいていたがやはり男子の力には勝てないようだ。
『…』
「ホントに真っ赤だな。糸みたいにゴワゴワしてるし。こんな髪、目障りなんだよ!」
少年はそう言い放つと、クシナの表情が変わる。グッと唇を噛み締められ、涙が滴り落ちた。
「私だって…―――私だって、好きでこう生まれたんじゃないってばね……でも…それでも、私なんだから、仕方ないじゃない!!」
「!」
クシナは力の限り体に力を入れ前に進もうとし、少年から逃れようとした。少年は力の限りそれを阻止し、千切れた髪がぱらぱらと地面に散らばる。
『乱暴は感心しないな』
「!!?」
突然現れたセンリの姿に驚いて少年がクシナの髪から手を離した。クシナは前のめりになり、それをセンリは受け止める。少年も驚いていたが、クシナもびっくりして固まっていた。
「だ、誰だテメー!」
センリは額当てをしていないので、忍ではないと判断した少年が怒鳴り声を上げた。センリも見た事の無い少年だったので、本当につい最近下忍になったのか、どこかから引っ越してきた子どもだろう。
『自分より明らかに弱い立場の人に意地悪をするのは、かっこ悪いよ。それに、人の外見の悪口を言うのも良くない』
「う、うるせぇ!!」
少年が激昂して拳を繰り出したが、センリはそれを軽く受け止めて足を掬って地面に引き倒す。驚く程一瞬の出来事だった。少年は驚く間もなく地面に背をつける。まるで手応えがなかった。
「!!」
少年が驚嘆してセンリから逃れようとしたがビクともせずに目を丸くさせた。まるで赤子でも相手にしているかのような態度だが、少年は、生まれて初めての感覚を経験していた。“何が何だか分からないが、とにかく逃げなければ”という感覚だ。
『“悪い子には説教が必要”かな?』
「っ!」
センリは優しく微笑んだが、なぜか鳥肌が立つ程の圧倒的な力を前にし、少年は泣きそうになって震えた。
センリはそれを見てふっと手の力を緩めると、すぐに少年が這いつくばって脱出した。少年はまるで全力疾走した後のように息切れしている。
「…い、行くぞ!」
呆然としている弟に向かって一声かけると、少年はクルリと振り返って早々に走り去ろうとした。
「!!!」
ヒュンッという僅かな風を切る音がしたと思うと、走り去る少年のすぐ横の桜の木にクナイが突き刺さっていた。
『忘れ物だよ』
少年は一瞬立ち止まったが、悔しそうにそのクナイを引き抜いて弟と共に去っていった。
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