木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-第3次忍界大戦-



戦場に出していたセンリの分裂体が二ヶ月ぶりに里に帰還した時の記憶を回収するのは、今までで一番時間がかかった。戦争が起きると、戦場の方に戦いに出たり、付近の一般人の住む場所に気を配ったりして里の外に出ている分裂体だったが、いつもなら半月に一度は戻ってくるので不思議に思っていたところ、その謎が判明した。

センリは自身の分裂体の頭に額を付けながら記憶を回収していた。


『(なるほど……だからこんなに長い間帰ってこなかったのね……)』


−−−−−−−−−−−


草隠れと火の国との国境付近。
センリの分裂体は岩隠れの五小隊程の忍と出くわし、周囲に村や人の気配が無い森の中まで引き付け一戦混じえ、全ての忍達の動きを止めてみねうちをし、一度木ノ葉隠れに帰還する最中だった。

深い森を抜け、それがだんだん少なくなり、そのうち草原が多く現れてくるとすぐに小さな集落が現れた。感知をすればすぐに分かるが、どうやら忍の住んでいる村では無いようだったので、戦争中ということもあり、センリは住人を驚かさないよう村を避けようとした時だった。


…ないで…………さ…ん!……

『!』


センリの耳に遠くの方から声が聞こえてきた。助けを求めるような懇願する声だ。センリはくるりと向きを変え、声のする方へと向かった。


『(いた!)』

「父さん!しっかりしてよぉ!」


声の出処はすぐに見つかった。
少し開けた広場のような場所で、男が倒れていた。そしてその傍らには必死の表情をする少女と、沈痛な面持ちの数名の村人。倒れた男の腹部からおびただしい程の血が流れている。

センリが地面に降り立つとその場にいた村人がサッと振り返った。

『だいじょう……ーーー』

「!――――おまえ―――何しに来た!」


少女が憤怒の形相で叫んだ。しかし他の村人はセンリを見て怯えたように後退りをしている。

センリは両手を上げ、攻撃の意思はないことを表したが、少女は憎しみの表情をしたまま男の体を引き寄せた。


『何もしないよ。その人の怪我を治すだけ』

「ふざけないで!そんな言葉信用出来るか!」

村人達は少女と男の後ろにオドオドと移動していたが、少女は怯まない。しかしセンリも引き下がるわけにはいかなかった。男と少女にそっと近寄り、二人の前に膝をついた。男は僅かに呼吸を繰り返していた。

『その出血量だと危ない。傷を治すだけだから、大丈夫だよ』

「父さんに触るな!」



少女の体は震えていた。しかし彼女の父であろう男の怪我をどうにかする方が先決だった。
センリが男の腹部に手を伸ばした時、少女が小刀を懐から取り出しその手を刺した。鋭い痛みがセンリの手の甲から手の平を突き抜け、それがすぐにとてつもない熱さを含んだ激痛に変わった。脈拍に合わせてズキンズキンと激痛が走る。

『大丈夫だよ』


しかしセンリは少女に向かってにっこりと笑い、左の手を男の腹部に伸ばした。

「……!……」


少女は唖然として固まり、ただ呆然とセンリを見つめていた。村人達も目を瞬かせて立ち尽くしている。

センリの手が白いチャクラに包まれ、それを男の腹部に流し込むようにすると出血が止まり、それと比例して男の苦悶の表情が解かれていく。




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