- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-ミトの最期、忘れられた記憶-



「我は……センリの両親の霊魂から形成された、物の怪だ」


マダラの頭の中でバラバラに散らばっていた点が、線で一直線に結ばれた。
「尾獣ではない」というセンリとカルマの言葉、カルマがセンリの事をこと細かく知っている事、不死鳥の力を制御出来ている理由、何よりも大事にしているような様子、自分に対する疑心や信頼……―――。

にわかには信じ難い話だというのに、マダラは全てに納得していた。


「カルマという名はセンリが我に付けた名だ。あの子の…弟の名だ」

「それは……センリが無意識にそう名付けたのか?」

「左様。その瞬間記憶を思い出したのかと驚いたが……あの子は変わらず忘れたままだ。無意識に思いついたのだな……」


カルマは遠い目をしていた。しかしそれと共にカルマは妙な安堵を感じていた。あれ程疑っていたインドラの転生者が自身の話を迷うことなく信じた事にもよるし、蟠りを吐き出せた不思議な爽快感もあった。


「センリは、その記憶は一切覚えて居ないのか」

「そのはずだが……稀に夢に見たりしているせいか、自分の両親が能力故に殺された事と、弟がいた事までは思い出しているようだ」


マダラは苦虫を噛み潰したような表情をして、小さく息を吐いた。


「お前…センリの前ではその記憶の事を話すなよ。何かの拍子で思い出されても困る。あいつが思い出さない限り、これらの話は俺達だけに留めておく。あいつは知らなくて良いことだ、どれも、な」


マダラの、センリに対する気遣いと深い思いが分かり、カルマはきゅっと唇を結んだ。本当にその通りだと思っていた。


「勿論我もそう思っている。我自身に両親の心がある訳ではないが……それでも我はあの子を大切に思っている。こんな話、あの子に出来るはずもない……」


カルマの心苦しそうな声で、マダラはその話を完全に信じることになった。初めて聞く、カルマの声だった。


「しかし……御主に話す事ができて良かったとも思う。御主の思いは……――――」

「変わるわけが無い。もう分かりきっている事だろう。前の世界だか前世だか知らんが、センリはこの世界で、俺と生きる道を選んだ。何があろうとも、俺はセンリから離れるつもりはない」


嫌に鋭く、強い言い方にカルマは僅かに笑みを漏らした。その鋭さの奥にある愛情に気付いたからだ。


「……我は、今度こそあの子に幸せを掴んで欲しかった。この世界なら、あの子の体質も以前ほど稀ではない。珍しい事は確かだが……我が取り憑く事によって多少なりとも抑えられる……。この世界に溢れる力のおかげであの子は強くなることが出来た上に、御主という大切な存在と共に生きる事が出来ている」


カルマは再び空を見上げた。やはり眩しいくらいの晴天だった。


「この世界でも争いは起きている。上手くいかないこともある……しかし、それでも、この世界での生活はあの子にとって大切で、馴染んでいる。これからもこの世界でのあの子の人生を……センリがどうやって生きていくのか、我は見ていたい」


カルマの切実な願いだった。マダラはカルマを責める事はなかった。しばらくカルマの表情を、探るように見ていたマダラだったが、ふと口を開いた。

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