木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-ミトの最期、忘れられた記憶-



マダラもカルマも、暫しの間口を開かなかった。その空気に似つかわしくない、雲一つない空の中で、太陽がキラキラと輝いていた。

先に口を開いたのはマダラだった。



「その娘が、センリだったというわけか」


カルマはゆっくりとマダラを見上げ、そして数秒かけてゆっくりと頷いた。

突拍子のない話だったが、マダラは全てを理解していた。カルマが以前言った、“センリの凄惨な過去”を踏まえれば何も難しい話ではなかった。


「……全て、真実か?」


カルマが再び頷いた。
想像以上に悲惨なセンリの記憶に、マダラは長いため息を吐いた。


「お前があいつに話さないのは正解だな。むしろこの先あいつが思い出さない限り、永遠に知らせずにいた方が良い話だ」


本来の家族の事まで忘れてしまっていたセンリが、記憶を取り戻せればと思っていたマダラだったが、この瞬間でそれが全て覆った。


「あいつの弟はどうなった?」


カルマはマダラの鋭くも見える瞳を見つめ、それから言葉を発する。


「センリを死に追いやった村人を、弟は、それはそれは恨んでいた。すぐに殺したい程に。だがそれはしなかった。「生きろ」というセンリの言葉通り、孤独だったかもしれぬが…彼は生きた。それが姉の為に出来る事だと解っていたからだ」


その言葉を聞いてマダラは安堵していた。その後に街人に復讐をしたなどの事実が待ち受けていたら、センリが命をかけた意味が全く無くなってしまう。カルマもその事についてはどこからほっとしたような口調でもあった。


「で……それが前の世界、だのとお前は言っているが……」


「言葉通り、以前の世界でセンリが生きた二十五年間の出来事だ。ただもう一つ……――センリと弟の両親は、その特異な体質からか、魂魄なりとも二人の行く末を見守っていた。しかしセンリが自害を選んだその瞬間、僅かな欠片だけで漂っていた両親の魂が結び付き合い、一つの光を作り出した」

「……?」


先程よりぶっ飛んだ話にマダラは眉を寄せた。


「両親は自分達の弱さを痛烈に理解し、我が子を死に導いたことを酷く後悔した。一つになった両親の魂魄は、それから幾億の時空を彷徨い……。そして何億との時間が繰り返された後、二人の魂の欠片は、同じように時空をさ迷っていた最愛の娘を、もう一度異なる世界へと導くことができた。そして記憶を失った娘に新たな生を与え、そして永遠の命も与えた」

「まさか、」


マダラの瞳が驚きで満ち、信じられないというふうに開かれた。


「鳳凰とは陰陽が重なり出来上がるもの……雄と雌とのつがいからなされる、光と時空を操る不死の鳥の事だ」

珍しく驚嘆しているマダラを見つめながらカルマは尚も真剣に言い放った。

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