木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-次の未来に-
「だけど…いくら大人数で、それに里内の暗部に気付かれずに襲撃できたとしても、あのフガクさんやシスイまで安々と殺せるなんて……そんな忍がいるなんて考えられない」
オビトが不信感を顕にしながら言った。
事件から一ヶ月半、真相は謎に包まれたままその後は何の音沙汰もなく毎日が過ぎ去るのをオビトは不審に思っていた。
里内に訪れていた人間も徹底的に洗ったが、日向の事件の時とは違い、今回はその可能性のある者はいなかった。それを考えれば、里内には文字通り“忍び”込んだはずだ。
感知結界にかからずに里に入り込める…そしてうちは一族を一瞬で抹殺出来る。そんな人間など、目の前のセンリとマダラくらいしか思い浮かばなかった。
「イタチとサスケは命拾いしたな……あの時センリと居なかったら絶対に死んでた。犯人にとっての誤算でもあっただろうけど」
『だけど何でうちは一族だけ…』
オビトが呟くように言った言葉にセンリは眉を下げる。
「うちはの名は他国の者であっても忍であれば知らぬ者はいない。写輪眼の力は木ノ葉以外の里にとっては脅威でしかない…。うちはを疎ましく思う忍なんざ大勢いた」
マダラが言った。
「ならやっぱり犯人は木ノ葉の人間じゃないって事か?」
「そうなるだろうな。うちはの写輪眼を難無く交わしてあれだけの人数を殺せる者など今の木ノ葉にはいない。しかしここまで痕跡を残せず皆殺しにできるとは……。クソッ、何か少しでも手掛かりがあれば……」
マダラはそう言って大きくため息を吐いた。
オビトもこの事件に関しては悔しさを滲ませていたが起きてしまったのならもうどうする事も出来ない。未だに一族が抹殺されたなどという実感が無かったが、とにかく犯人は絶対に探し出さなければならないと思っていた。
しかしその時事件の事を思い返していたセンリは重要な事を思い出した。
『そういえば……!私達がフガクとミコトのところに駆け付けた時…フガクはまだ生きてた。それで……その時何か……――』
マダラとオビトがセンリをじっと見つめた。
センリは目をぎゅっと閉じてあの時の事を必死に思いだす。あの時フガクは…―。
『そう……。あの時フガクは「ナントカじゃない……」とか「裏切り」とか……そんな感じのことを言ってた』
「どういうことだ?」
マダラは盛大に眉間にしわを寄せる。
「“何”じゃないって?」
オビトも訳が分からないというふうに顔をしかめる。
『ごめん、それは聞き取れなくて……』
マダラは考えるように腕を組んだ。
「その“何”の部分は捉え方によって如何様にも考えられるな……しかし「裏切り」というのはどうにも引っかかる。フガクの顔見知りだったということか…?」
「でも里の忍じゃうちは全員を殺すなんて無理なんだろ?それに三代目は「あの日あの時に不振な動きをしていた木ノ葉の忍はいなかった」って言っていたし……」
オビトが疑問げに問いかけた。センリも考え込むように斜め上を見つめた。そしてすぐに一つの仮説が浮かび上がった。
『裏切りって言葉の意味が分からないけれど……もしもその襲ってきた人が知り合いだったと考えると……――』
オビトがなるほど、というふうに目を開いた。
「そうだ…。そうなれば隙が生まれる。油断していたと考えれば、フガクさんやシスイや警務部隊の奴らがやられたってのも頷ける」
オビトの言葉にマダラも小さく頷いた。
「これは完全に憶測でしかないが……その相手が変化で化けていたか、もしくは……これは強引かもしれんが、写輪眼を持つ者だったか……」
センリとオビトが同じように目を見張った。
『写輪眼を持ってる人がいるかも、ってこと……?』
「でもそれなら「裏切り」って言葉と辻褄が合うぜ。「一族」を「裏切った奴がいた」とか……」
センリはにわかには信じ難いという表情だったが、オビトは神妙に頷いた。
『でも私たちは九十年近くうちはの人たちを見てきたけど、木ノ葉隠れが出来てから、里抜けした人はいなかったよ。ねえマダラ?』
マダラは一度センリを見た後、小さく首を縦に降った。
「それは確かだ。しかし……写輪眼は他者に移植する事は出来る」
センリは小さく息を飲み、確かにとオビトを見ながら首を振った。オビトも納得しているような表情だ。
「それなら有り得なくはないぞ。そうすると……フガクさんが「うちはの人間じゃない」と伝えようとしたかもしれないと推測もできる」
『…………』
三人ともこの仮説が理にかなっているのではないかと思った。しかしそれと同時に一番考えたくない想像でもあった。
「調べる価値がありそうだな…」
マダラは小さく呟いた。
ここに来てまた調べなければならない案件が増えてしまったが、その代わり重要な手掛かりを得る事が出来た。
「また探しに出るんだな?」
オビトの問いにマダラは頷く。
[ 164/169 ][← ] [ →]
back