木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-うちは一族抹殺-
『ミコト…!フガク!』
先に動いたのはセンリの方で、血だらけで居間の畳に倒れている二人に駆け寄る。開けた障子とは反対側の障子には二人の血痕が飛び散っていた。
酷い状態だった。
イタチは口元を咄嗟に覆ったが、その出血量から二人が助からない事は目に見えていた。
「!…父さん!母さん!」
何事かと着いてきたサスケがイタチの横をすり抜けて居間に駆け込んできた。
『!…フガク…!』
サスケの声に反応したように血塗れのフガクの体が動き、センリは咄嗟に脈を確認する。
「…ーー…じゃ…………ない……」
フガクが僅かな呼吸と共に、囁いた。センリはハッとしてフガクに顔を寄せた。
「……ない……ーー……裏、切り……」
フガクの呼吸が止まりかけていることに気付き、センリは体を起こした。
『待ってフガク!すぐに医療班を呼ぶから!』
再度、僅かに鼓動を感じてセンリが語り掛けるがフガクはそれ以降ガックリと頭を垂れて動かなくなった。
『フガク!しっかりして!』
「父さん!!」
サスケが泣きわめきながら父に縋り付いたが、その体はピクリとも動かない。寄り添うように倒れていたミコトだったが、こちらはもう事切れてしまっていた。
『…っイタチ、サスケを連れて火影のところに行って!すぐに!』
「!…」
呆然と立ちつくしていたイタチにセンリは言って、イタチはサスケを抱え上げた。
「イヤだ!兄さん離して!父さんと母さんが!」
『行って、イタチ…!』
暴れる弟を何とか押さえつけてイタチはすぐにその場を去った。
二人の姿が消えたのを確認してセンリは辺りを見回した。チャクラは使えないが、家の中に不審な気配は無い。
『(もしかしたら、犯人はまだ…)』
血痕がまだ新しかった事と、フガクが生きていた事を考えると犯人はまだ近くにいるのかもしれないと考え、センリはすぐに玄関を飛び出した。
うちは一族は大体が同じ場所に住居を構えている。センリは急いで道に出て、そして僅かな異変に気付いた。
静か過ぎる。
通常この時間であればこの辺りの道にはまだ人がチラホラいるはず。風呂に入る子ども達の声や、犬の鳴き声の一つでも聞こえていてもおかしくはない。しかし辺りに漂うのは不気味な静寂。
『!……まさか…!』
センリは向かいの家の玄関を開け、そのまま上がり込んだ。
『!?』
土足のまま廊下を少し踏み込んだところで、大量の血に気付いた。この家はフガクの側近を務める男の家だ。そして床に倒れているのも、
『ヤシロ!』
ヤシロの白髪が血で真っ赤に染まっていた。センリはすぐさま膝をついて状態を確認するがすでに死んだ後だった。
『そんな……』
状況が全く読めず、センリは混乱の息を吐いた。
『…っ』
しかしすぐに立ち上がり、隣の家に駆け込む。嫌な予想通りそこに住んでいたうちはの人間も血濡れで死んでいた。しかしそこから少し離れた商人と忍の家には異常がない。
『(まさか、うちは一族だけ…!)』
センリの不吉な予測は的中していた。
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