- ナノ -


木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-ミトの最期、忘れられた記憶-



新しい時代が進んでいく中で、また一つセンリにとって大きな出来事があった。

前々から約束されていた事だ。


クシナが十三歳の誕生日を迎える少し前、ミトからクシナへと、クラマを移す儀式が行われた。

極秘事項の為、木ノ葉隠れからは離れた森の一角で極少数でそれは行われ、センリとマダラももちろんそこに立ち会った。念の為ヒルゼンと数人の暗部もすぐ側で戦闘服に身を包んで待機している。



「…準備は大丈夫ですか?」

「問題ない」


立つのもやっとという様子のミトの問いかけに、マダラが力強く頷いた。


「では……行きますよ…!」


ミトが自身の中に封印されているクラマを引きずり出す。巨大な鎖に引っ張られて、クラマの大きな体躯が唸り声を上げながらミトから現れ出る。



「久方振りの挨拶を…という暇はないな」


万が一の為にセンリは結界を張っていたが、その必要はなかった。

クラマがミトから飛び出した瞬間、マダラが万華鏡写輪眼を向けて幻術をかけたからだ。クラマであっても、万華鏡写輪眼の瞳術の前では為す術がなかった。


「クシナ」


マダラの声に、反対側に待機していたクシナがハッと我に返る。クラマが幻術にかかっているその隙にクシナの背から鎖が飛び出し、瞬時にクラマに絡み付く。


『(クラマ……)』


クラマは一度切りしか鳴き声をあげることなく、気を失ったままクシナの鎖に巻き取られ、体に封印された。

少々強引なやり方だったかとセンリはクラマに申し訳なく思ったが、ミトとクシナの状況も心配だった。


『クシナ、大丈夫?』

「大丈夫……だってばね…!」


クシナは最初こそ息を切らして苦しそうだったが、すぐに話せるだけの気力を取り戻した。クシナの無事を確認するとセンリは、マダラとミトを振り返る。


『マダラ!ミトは…』

「さすがはうずまき一族だな。衰弱しているがまだ息はある」


老いて小さくなったミトを助け起こしながらマダラが言った。しかしそうは言ってもミトは目を閉じ衰弱している様子だった。

普通なら尾獣を抜かれた瞬間人柱力の人間は死んでしまうが、生命力のあるうずまき一族のミトはまだしばらく持ち堪えそうだった。


『クシナ、体は平気?』

「ん…もう大丈夫」


クシナの呼吸は徐々に静まっていき、大丈夫そうだとセンリは判断し結界を解き、監視していたヒルゼンと暗部の忍を呼ぶ。


『ヒルゼン、クシナを病院まで送ってあげて。念の為、少し休んだ方がいい。先に結界は張ってあるから』

「うむ、分かりました」


センリはヒルゼンに伝えると、マダラの方を見つめた。無言で頷き合い、二人はミトを連れて急いで木ノ葉に戻った。
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