木ノ葉隠れ確立期、発展期編

-事件発生とオビトの弟子入り-



イタチの事情聴取が行われたが、気持ちを切り替えたイタチは淡々と説明をしていた。分かった事は、「突然攻撃してきたのは鬼の面をした男」だという事だ。

ヒルゼンもセンリも様々な推測をしていたが、そんな男には全く心当たりがなかった。それはもちろんイタチもそうだ。イタチが言うには「恐らく幻術使い」との事だったが、襲ってきた意図が不明だ。



『(この事は、マダラにも連絡した方がいいかな……)』


些細な事という訳ではなかったが、忍の世界での事件としては珍しくはない事だった。それでもセンリは少し引っ掛かりを感じてマダラにその旨の手紙を送る事にした。



ただ、それとはまた別に、ある事件も起きていた。


――――――――――――――

悪い事とはこうも重なるものか、とヒルゼンは暗い森の中で立ちすくんでいた。ヒルゼンも薄々心配していた事件がついに発生したのだ。



「大蛇丸が里を抜けました」



暗部の一人からセンリへそう告げられた時、ヒルゼンがやり切れないという表情で火影室に戻ってきた。


九尾襲来事件以来の何年かで、里内の人間が連れ去られ行方不明になるという事案が幾つか発生していた。警務部隊も総出でその事件の解明に取り掛かっていたが中々真相が掴めず、その矢先の事だった。その犯人が大蛇丸だったのだ。

大蛇丸は里から少し離れた地下に造られた洞窟の中で連れ去った人々を使い、人体実験までしていた。その現場に駆け付けたヒルゼンだったが、大蛇丸を逃してしまったという。

センリはその事を聞いてすぐに大蛇丸の後を追った。見つけ出して殺す為ではなく、話をする為だ。

ヒルゼンから聞いて直ぐに里を飛び出し走ると、何キロか離れた場所で大蛇丸はすぐに見つかり、センリは長い黒髪に駆け寄った。


『大蛇丸くん!』


息を切らし、焦ったようにセンリが声を上げると、その気配に感づいていた大蛇丸は驚く様子もなくゆっくりと振り返った。センリが来る事を分かっていたような余裕のある動作だった。


「センリ様……まさか私を引き止めに来て下さったのですか?」


低い笑い声だった。猫をかぶるのはやめた、とでも言いたげに本性を表した大蛇丸の声だ。


『どうして、人体実験なんてしていたの?』


困惑しきったセンリの表情を見て大蛇丸は高らかに笑った。


「どうして、ですって?そんな事は簡単……永遠の命を実現する為ですよ」

『永遠の、命…?』


更に訳が分からないというふうにセンリは顔を歪め、それと比例して大蛇丸の笑みも深くなった。


「永遠の命を持つ貴女からしたら分からない事かもしれませんが……。この世の全ての忍術を解き明かし、誰も実現出来なかった事を成し遂げる…。それが私の夢なのですよ、センリ様」

『…どうして?』


眉を寄せながらも真剣な眼差しのセンリを見て大蛇丸はピクリと眉を動かす。


『忍術を解き明かして、永遠の命をつくって……それで大蛇丸くんはどうしたいの?なんの為にそうしたいと思うの?』


純粋な疑問をただ静かに問い掛けてくるセンリを見て大蛇丸は唇を噛み締めた。


「何の為に……なんて…。そもそも忍とは、忍術を扱う人間の事を言う…――理由などないですよ」

『それは嘘だよ。大蛇丸くんは理由もなしに人を殺したりしない』

「それが貴女の弱さですよ、センリ様。疑うことを知らぬ純粋な心は、時に弱味に変わる……。貴女が思っているような人間ではない、私はね…!」

『!』


一瞬の隙をついて、センリの体に大蛇が巻き付いた。驚く間もなくセンリの首に大蛇の牙が深々と突き刺さった。

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