木ノ葉隠れ確立期、発展期編
-事件発生とオビトの弟子入り-
しかしセンリが大名のところに辿り着いた時、最初に見えたのは大名ではなく、急いで前を走る暗部の忍だった。どうしたのかと問い掛ける前にセンリはその惨状を見て目を見張る。
護衛の忍と大名は地面に倒れ、一人の忍の胸からはおびただしい鮮血が流れ出ている。
その側にイタチが膝をついて座り込み、呆然としていた。
センリは血塗れの忍の脈を確認したが、すでに事切れていた。
『イタチ、大丈夫?』
何者かに襲われた事はセンリにすぐ分かったが、イタチはセンリが声をかけてもまだ呆然と空中を見つめていた。
『イタチ』
「!」
少しはっきりとした声で問いかけると、イタチはピクッと動き、そしてセンリの方を向いたと思ったら突然倒れてしまった。センリはイタチの身体をさっと抱きとめ、すぐに首元に指の腹を当てた。
『(脈拍も正常だ……幻術にかけられているわけでもなさそう――)』
どうやらイタチは気を失っただけのようだったが、その顔は真っ青だった。余程怖い思いをしたのだろう。センリは一瞬切なげに眉を寄せた。もう少し早く里を出ていれば間に合ったのかもしれないが、今は後悔の念を感じている場合ではなかった。
『一体、何があったの?』
少し離れた所から後を着けていただろう暗部の忍に聞くが、こちらもまた突然の出来事に狼狽えているようで、首を横に振っていた。
「分かりません……異変に気付いて、私たちが駆け付けようとした時にはすでにこの状況で…」
それならセンリが辿り着く直前に何か事件が起きたという事になる。
センリは辺りを見回すが、死んでいるのはどうやらイタチの班員の一人だけで、他の者達は幻術にかけられているだけだ。もしかすると少し離れた所にいる暗部の忍にも目くらまし用の幻術をかけていたのかもしれない。
『…とにかく、今回の視察は一時中断して、大名を城に帰らせよう。訪問は延期にした方がいい』
「はい」
センリは辺り一体を感知してみたが、可能な範囲に、人間の気配は一切無かった。
「増援を呼びますか?」
暗部の一人が問いかける。
『そうだね。この辺も詳しく調べなきゃならないし…』
センリは感知を解くことなくもう一度辺りを見回したが、やはりどこにも変わった様子はない。何の変哲もない、ただの道だ。
センリは影分身を三体作り出した。
『私の影分身達はここに残って幻術にかけられた人たちの目を覚まさせて、近くも調べておくから。私達はテンマくんをつれて、里に戻ろう』
センリは地面に伏せっているイタチの班員を見て切なげに瞳を揺らした。まだ十三になったばかりの子どもだ。常に死が付き纏う忍とはいえ、彼を家族の元に還す事が辛かった。
「分かりました…。そのうちはの子はどうしますか?」
センリは暗部の忍の言葉でハッとして、腕の中で眠っているイタチを見つめた。他の者達は幻術にかけられているだけなので身体に問題なはいが、イタチの方は病院に連れて行った方がいいように思えた。それにイタチはどうやらその現場を目撃したようだ。
『イタチも木ノ葉病院に連れて行った方がいいと思う。みんな、ここの事はよろしくね』
『分かった』
『オッケーだよ』
センリの言葉に、影分身体達は全員頷いた。
全く予期していなかった出来事に、センリは胸を痛めていたが、木ノ葉隠れに帰還するのが最優先事項だった。
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