大筒木編
-ハゴロモの死と隠された呪い-
それからアシュラの三人の子どもたちが外に出て、遊ぶ年くらいになると、一度だけハムラが地球にやってきた。
ハゴロモもセンリもびっくりし、そしてとても嬉しかった。
何十年ぶりかに、三人は笑いあった。
ハムラも年老いて、もう力は無くなっているようだった。そして子孫もいるという。そして驚いた事にそのうちの何人かはこの地にいるという。カグヤやハムラと同じ目を持つ人間たちだ。いつか会ってみたいとセンリは強く思っていた。
何時間も、三人は語り合った。
ハゴロモは本当に嬉しそうだった。ハムラも、センリとハゴロモが幸せそうで安心していた。
「センリは本当にいつまでたっても変わらんな」
そう言って年老いたハムラは笑った。
二度目の別れはそれほど寂しくはなかった。ハゴロモにもハムラにも、次の世代を生きる宝があった。きっとセンリはその全てを見ることになる。二人の思いは託され、伝えられていくだろう。それを見届けようと、センリは胸に誓った。
あの日、命を懸けて自分の母を、友を、封印したこと。無駄にしないように見守ろう。センリはそう誓った。
もちろん時々インドラの事が気にかかった。
修業しすぎていないか、結婚はしたのか、ちゃんと休んでいるか。どんな別れ方をしたって、インドラはセンリの中では、ずっと家族だった。
アシュラの子どもたちが大きくなるのを見て、同じくらいの歳の時のアシュラとインドラを思い出した。
センリはそれからは、一度も泣かなかった。
泣く暇もないくらい忙しく楽しく過ごした。
今まで通り修業にも手を抜かず、アシュラの子供たちの遊び相手になるのも手を抜かなかった。
尾獣たちにも毎日のように会いに行った。
尾獣たちはもうセンリの三倍くらいの大きさになっていた。産まれたての赤ん坊ではない。
こちらもみんなちゃんと成長していた。
どうやら九喇嘛が反抗期で、センリが背中に抱きつくと「離せ!」などと言ってなかなか乱暴に引っぺがすのだ。
しかしそんな成長もセンリは嬉しかった。
カルマはこのところ眠いと言って寝てばかりだった。理由はよく分からないが、とにかく眠いらしい。だがそれ以外には特に変わりはないのでセンリは気にしていなかった。
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