- ナノ -


大筒木編

-愛-



後継者がアシュラに決まり、皆が宴をしている頃、センリはハゴロモの隣にいた。遠くから皆の歓声が聞こえてくる。


『ん?』

するとハゴロモとセンリの前に音もなくアシュラが現れる。結果に納得いかないようだった。

何故なのかとハゴロモを問い詰める。ちょうどセンリもその話を聞こうとしていたところだ。


「インドラは変わってしまった。写輪眼のせいでな…」

ハゴロモはぽつりと話し始める。


「インドラの写輪眼を見た誰もがその力に圧倒される。インドラ本人も気づかぬうちにな。それほどにインドラの写輪眼は強力なのだ。その力ゆえにいつしか本人も人の心を理解することをやめ、ついにインドラの心は閉じてしまった。

だがお前は違う。お前は人々の心を理解できる。ゆえに愛をもって忍宗を生かした。それが人々の信頼を生み、絆を生み、仲間を生んだ。

絆とは多くの苦楽を共にし初めて生まれるものだ。絆には愛と情が溢れている。絆があるかぎり忍宗が悪用されることはない。

だが絆なき力はいずれ世界に災いを起こす。


アシュラよ。お前は兄とともに2人力を合わせ忍宗の絆を広めるのだ。

これよりお前にわしの力を託す」


そうしてハゴロモはアシュラの頭に手を伸ばす。
ハゴロモはそう言ったが、センリの頭にはなにか突っかかっていた。


インドラは一体どこで写輪眼についてを知ったのか。数年前、あの時の大イノシシの件の時のこと。あれは偶然だったのか?

突然、人が変わったようになってしまったインドラ。

人が大きく変わるのは、それ相応の何かとてつもない衝撃を受けた時。

本当は愛を知っているインドラ。ならばなぜ力を求める?


『(まさか、ね………)』


インドラがそうなるように手引きした人物がいる……。センリは一つの絶対有り得ない仮説を頭から振り払う。
そうこうしているうちにハゴロモはアシュラに力を受け渡したようだった。ハゴロモからは六道のチャクラを感じられなかった。


『私ちょっとインドラのところに行ってくる』


センリはハゴロモとアシュラに告げる。


『インドラの心が閉じてしまっていても、それを開くことが出来る人がいるとしたら、ハゴロモ……それはきっと私たちだよ。私は諦めない。今度は諦めたくないの。
インドラはカグヤじゃない。闇に落ちた人間でもない。インドラは………』


センリはハゴロモとアシュラを振り返り、いつもの笑みを向ける。

ハゴロモはセンリには適わないと思った。いつだってセンリは自分に出来ない事を成し遂げ、自分なら諦めてしまうことも、絶対やり通す。どんな人だって見捨てない。そういう強く優しい心がある。


やはり、センリだけには勝てない。

ハゴロモはセンリの小さな背中を見てそう思った。



『インドラは……………大切な家族だから』

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