大筒木編
-インドラとアシュラ-
インドラとアシュラはいつも二人一緒に勉強し、遊び、共に成長した。
特にインドラはよく勉強した。
そしてその成長は武術的要素のなかった忍宗に、大きな影響も与える事となった。
健全な精神を宿すための健全な肉体。それを鍛える以上の武術の必要性をハゴロモは感じてはいなかった。
しかしインドラの発明により忍宗の流れは大きく変わることになった。
ある日インドラはみんなを集めてその成果を見せてくれた。インドラが手でなにか形をつくり、手のひらを出すとそこにボッという音を立てて火が現れたのだ。みんながオオーと歓声を上げる。
「何をやったの?兄さん」
インドラにアシュラが駆け寄り、その手をまじまじと観察する。
「チャクラを練り力を発動させるためには手を結ぶ型が関係してることに気づいたんだ。型の組み合わせ次第ではいろんな力が使えるようになると思う。手の型を“印”、発動する現象を“術”って名づけてみた」
インドラはスラスラと説明する。毎日勉強していたのはこれだったのか。センリとハゴロモはそんなインドラを見て目を見合わせる。
カグヤの力を受け継いだハゴロモ、強大な力を持つセンリにとって印は必要の無いものだったが、二人が力を分け与えた者達はそうではなかった。
インドラは十歳でハゴロモやセンリにも分からなかった発明をしてのけたのだ。
印による術の発明は人々の暮らしを本格的に変えた。修業をつめば誰でもそれが出来るようになった。
薪を燃やすのに火を、作物のための水を、色々なところでそれは役に立つようになった。
………しかしこの頃から、センリもハゴロモさえも知らぬところで闇の力は蠢いていたのだ。着々と、誰にも気付かれずに。
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