大筒木編
-本当の姿-
カエルが三人を連れてきたのは山の頂上だった。頂上と言っても十分ほどで着く。
「なんだ?こんなところに連れてきて」
ハゴロモが不思議そうに周りを見渡す。
「あれを知っているか?」
突き出ている岩に飛び乗るとカエルは少し先に見える神樹のほうを指指した。
「もちろん知っている。あれは終焉の峠」
ハゴロモは神樹を取り囲む峠を見て言った。
「違う。あの先を見た事があるか?」
「いいや、ないな。母上からあの先には近付くなと言われている。全員の掟だ」
ハゴロモが言うが、たしかにカグヤは神樹の実を口にしてから民が神樹に近付くことを禁止にし、息子達にも近づいてはならないと命を出していた。
「誰もあの向こうを見た事が無い」
ハムラも続けて言う。
「娘よ、お主はどうだ」
ハゴロモとハムラがセンリを振り返る。
「まさかセンリはあるのか?」
センリは少し考えた後に声を発した。
『神樹のことでしょう?ハゴロモとハムラが産まれる前ならあるよ。まあ、二人が産まれる前よりまた大きくなって、…』
そこまで言ってセンリはふと気が付いた。確か神樹はこの地にある生命を吸い大きくなってるとカルマから聞いた。そしてまたそれがさらに大きくなってるという事は…。
「あの向こうに神樹の正体がある」
センリが何か考え始めたのを見てカエルがハゴロモとハムラに言う。
「神樹は大地の力を吸い取り続けている。あれがある限りこの地は弱り続ける」
「そうなの?」
ハムラが首を傾げる。それを見てカエルが呆れたようにため息をついた。
「お主なら心当たりがあるようじゃの。鳳凰の娘よ。もう一度よく考えてみることじゃ。そして真実を知りたければあの向こうに行くことだ」
センリはカルマのことを知っていたことにかなりびっくりした。カルマの事はカグヤさえ知らないことだったからだ。
「じゃあの」
一言いうとカエルは岩から飛び降りて近くの水たまりに向かうとチャポンと消えてしまった。
『二人が言いたい事はわかる。でも私にもまだ確信がないんだ。とりあえず村に帰ってからにしよう』
センリは何か言いたげな二人をなんとか制して山を降った。
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