大筒木編
-大筒木カグヤと神樹の力-
センリ達が到着したのは森の奥にある神社のようなところ。センリは裏側に座り空を眺めるカグヤの隣に立っていた。
『きっとテンジさんはうまくやってくれるよ』
心配そうに空を見上げるカグヤに元気づけるように
センリが言う。
『……!!』
到着してから幾分か経ち真夜中もとうに過ぎたころセンリは表が騒がしいことに気づいた。
「敵襲だ!出合え!!」
「キャアァァ!」
突然の叫ぶ声。女中の悲鳴。
カグヤとセンリは顔を見合わせる。
「カグヤ様!センリ様!」
アイノが二人の元に血相を変えて駆けつけた。
『まさかカの国の−−……』
「こんなところに隠れていたか」
間髪入れずに武装した男たちが姿を現す。センリはカグヤを庇うように前に立つ。
「何者です!?ここは我らがソの国の領地です!」
アイノが声を荒げる。
「ソの国だと?もうまもなくソの国は滅びる!ソの国のものはわたしのものになるのさ!」
カの国の男がニヤリと笑いながら言う。
「(噂通りの美貌の姉妹だ……こやつらは二人とも……)いまからわたしのもの!」
カグヤはなにも言わず男を睨み付け、センリもカの国の集団を見る。
突然カの国の軍勢が押し寄せたかのように見えたが、それは少し違った。ソの国に入っていたスパイがカグヤとセンリが向かった場所を知らせていたのだった。
『カグヤ』
センリがカグヤに囁くとカグヤは小さく頷き、センリの手を取って走りだす。アイノともう一人の女中もそれに続く。
「逃げられるか!」
カの国の集団がそれを追う。
表に回るがそこはもうソの国の家来たちは倒され、血に染まっていた。アイノが口を手で覆う。
だが何を思ったのかカグヤは階段を下り、カの国の者達に向かっていく。
「ほう…この状況でも臆さぬか…。ますますわたし好みよの……捕らえろ!!」
カの国の男が号令をかけた。
『ダメだよ!カグヤ!』
センリの制止を振り払いカグヤはその瞳を襲い掛かるカの国の男達に向けた。
その瞬間二人の男が何かに殴られたかのように吹き飛んだ。
「!!」
「ワラワに触れるな」
男たちがカグヤから後ずさる。しかし誰かが「ひるむな!」と叫んだ。
『カグヤ!』
「ウワァァア!!」
カグヤに襲い掛かってきた数人もの男たちが一瞬でズタズタに引き裂かれ血飛沫をあげた。
「イヤァァアア」
女中が顔を覆い、カの国の男は返り血を浴びながら目を見開く。あたりにバラバラになった身体が飛び散る。
「妖艶の正体は化け物であったか……これでソの国もほんとうに終わりだな!!」
隙を見てセンリはアイノとカグヤの手をひっつかんで森へと逃げる。
『(カグヤ…)』
カグヤとアイノは何も言わずただひたすら走り続けた。日が昇り朝が来てもソの国を目指し続けた。
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