- ナノ -


大筒木編

-大筒木カグヤと神樹の力-



その日の夜、センリは珍しく夜更かしをして屋敷の渡り廊下を歩いていた。ふと庭を見るとカグヤの後ろ姿が見えた。


『アイノ、カグヤは何をしているの?』

渡り廊下の先にアイノが見えてセンリは近づいた。

「センリ様、今日は珍しくこんな時間まで起きているんですね」


センリは頷く。
アイノは視線の先にいるカグヤの後ろ姿は心なしか寂しそうだった。


「カグヤ様は毎晩ああして夜空を見上げているんです」

センリは不思議に思って裸足のまま庭に出てカグヤに近付く。


『おうちに帰りたいの?』


カグヤはセンリの声に少しだけ反応し空からセンリへとその白い瞳を移した。


「センリ…そなたはワラワと同じ、この星の人間ではないな」


カグヤの言葉にセンリは目を丸くした。


「ワラワには解る。そなたとワラワがいれば…」

カグヤは一旦言葉を止めた。センリがカグヤを見るとカグヤはやはりどこか悲しげだった。


「争いのない平和が作れる」

センリは思いもしなかった言葉に少々驚いた。だがすぐ笑顔を浮かべる。


『カグヤは平和な世界を作りたいんだね?それならもちろん協力するよ!友だちとしてね!力になれるかは分からないけど』


そう言うとカグヤはほんの少しだけ笑ったように見えた。


「友……」

『そうだよ、友だち。せっかくこの広い世界で出会えたんだもん。そういう繋がりは大切にしないとね』


カグヤはその言葉の意味を考えていた。センリはカグヤを友だちだと心からそう言っている。出会ってから何年も経ったわけではないがセンリがとてもやさしい心を持っていることだけはカグヤには分かっていた。他の誰とも違うなにか温かい……。


「ずっと夜風に吹かれていたのでは寒かろう」

声がして二人が振り返るとそこにはテンジが立っていた。


『私は戻ります。もう眠いし…おやすみなさい、カグヤ、テンジさん』

センリは気を利かせてその場を後にした。
ついでにアイノも連れて屋敷の中へと戻った。


「(争いのない平和…)」

その日は特に星が綺麗で天の川がくっきりと見えてきらきら光っていた。

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