大筒木編
-大筒木カグヤと神樹の力-
センリがソの国で過ごして幾日か立ったある日、その日はカの国の使者が来るとのことで朝から屋敷内はバタバタしていた。
神鳥からも今は自分の好きなようにやればいいとお許しをもらったこともあり、センリはテンジや屋敷の人々とある程度仲良くなり、皆もセンリが此処に滞在するのを喜んでいるようだった。
センリが鼻歌を歌いながら屋敷内の掃き掃除をしていると会合が終わったようで建物からカの国の者たちが出て行く後ろ姿が見えた。
テンジたちが門のところで一行を見送るとセンリはテンジたちのもとへ近づいた。
『なんだかあまり嬉しくなさそうですね』
テンジと側近の二人がセンリに気づき神妙な顔をした。
「センリ殿か……カの国はここの領土を奪おうとしてきているのだ」
テンジはカの国の一行がだんだんと小さくなっていく様を見ていた。
「だが…カの国の戦力は我がソの国の三倍…。戦となれば勝ち目がない」
『戦いをするの?』
センリの問いかけに側近の男が答える。
「まだわからないがその可能性は高い」
「テンジ様!受けて立ちましょうぞ!どうせやるならソの国の意地を見せつけてやる!」
もう一人の側近が声を荒げたがテンジがそれを制した。
「そう慌てるな」
テンジはまだなにか解決策を考えたいようだった。
『カグヤのことは心配しないで。私が守るよ!』
神妙な面持ちのテンジにセンリは明るく言った。テンジは少しだけ表情を緩めた。
「センリ殿がそうなさらなくても私達でこの国は守ってみせる!」
側近がまた鼻息を荒くしたため、センリは苦笑いしてテンジを見た。
『(戦……やっぱりどの世界にもあるんだ…)』
空は見渡す限りの晴天でそんな気配は微塵も感じられなかった。
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