ぴんぽーん。


それは、ちょうど私がお昼を食べようとしていたときだった。
パスタを口にいれようとした瞬間に、タイミング悪くインターホンがなる。

くそ、誰だよ私の幸せな時間を邪魔するやつは………!!
親も出掛けてていないし、1人で出るのも危ないから居留守でも使おうかな。
…うん、自分で作っておいて言うのもなんだけど、ナポリタン美味しい。


ぴんぽーん
ぴんぽーん
ぴんぽーん
ぴんぽーん
ぴんぽーん
ぴんぽーん
ぴんぽーん。



「っておいいいいい!!」



しつこすぎるだろ!
いい加減諦めようよ!

ぴんぽーん。



「…………はあ」



もういいや。
居留守使うの疲れてきた。
しょうがないから出てやるか……はあ。



「はーい…………って、え?」



仕方なく玄関を開けてみれば、ドアの向こうにいたのは私のよく知った人物で。
にっこりと爽やかな笑みを称えて立っていた。

………これは何?夢?
でなきゃ、なんで幸村がここに?



「相変わらず間抜けな顔だな」

「一言めがそれか!てかなんでここに!?」

「まあ、いろいろとあってさ」

「(いろいろってなに――!!)」

「とりあえず入らせてよ。いいよね」

「ちょっ!」



返事聞く前に入ってるじゃないかお前ー!
さては最初から入る気満々だったな……(だったら聞かないでほしかった)

そして、1人でどんどん廊下を進んでいく幸村に頭が痛くなる。
くそ、この大魔王め……!
どこまでマイペースな奴なんだ!



「あ、なにこれ」

「……私のお昼ご飯」



リビングについて、テーブルの前で彼が立ち止まる。
食べかけのパスタが視界に入って、どうやら気になったらしい。



「手作り?」

「そうだけど………あっ!」

「ふーん」

「ちょっ、なに勝手に人のお昼食べてんのよ!」

「……まあ、食べられなくもない味かな」

「しかも勝手に評価してるし!なによ食べられなくない味って!」

「まずいような美味しいような……うーん、微妙。将来なまえの旦那になる人が可哀想だよ」

「な、なんだと…!?」



これ、結構自信作だったのに…
っていうか幸村の味覚がおかしいんだよ!

しかも結婚出来るかどうかもわからないのに、旦那のことまで心配されたし……!(余計なお世話だ!)



「あ、」



突然、なにかに気付いたように声をあげる幸村。
そしてニヤリと綺麗な顔で笑うと、もう一度パスタを口へ入れた。
……なんかフォークの使い方がやけに上手いな。
そして食べ方が異様に上手い。



「ね、これってさ、間接キスだよね?」

「えっ」



一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。
予想もしなかったことを指摘されて、思わず思考停止する。
か、間接キス………って、私が、幸村と?
え、えええええ!!(まじでか!)

ていうか、さっき幸村はニヤリと笑ってから食べたよね…?
も、もしかして、間接キスだと分かってて食べたってこと……!?(お前は確信犯か!)



「ふふ、さあなまえも食べなよ」

「やだ、もういらな……っんぐ!」

「ほら、よく噛んでね?」



無理矢理口に運ばれたあと、私は吐き出すのも嫌だから仕方なく食べた。
口の周りがべとべとするから、とティッシュで拭けば、やっぱりオレンジ色に染まっていた。



「あーあ、面白い顔だったのに」

「ふざけんなーっ!」

「え?誰に向かってそんな口聞いてるの?ふふ」

「ひいっ」



無駄に爽やかな笑顔を向けているけど、私にはそれがとてつもなく恐ろしく見えた。
思わず、小さく叫ぶ。
幸村の笑みほど恐いものはないと思うよ、うん。
私は幽霊やお化け屋敷よりも、こっちのほうが絶対に絶対に絶対に嫌だ。



「と、とにかく、帰ってよ」

「どうして?」

「もうすぐ親帰ってくるの!見つかったら変な誤解されるじゃん!!」

「なんだそんなことか。大丈夫だよ、ちゃんと挨拶するから」

「そういう問題じゃ……」

「ただいまー」

「(き、来たー!!)」



ガチャリと開いた玄関のドアの音に、冷や汗がでる。
やばい、お母さんに今の状況を見られたら完全に幸村が私の彼氏だって勘違いされちゃう…!!(こいつはただのクラスメートなのに!)

そして、お母さんがリビングへ入ってきて、私たちを見て一言。



「……お邪魔だった?」

「ちっが――――う!!!」

「ふふ、美人でいらっしゃいますね」

「あらー、ありがとう!」

「あ。そういえば、ご挨拶が遅れました―――――





初めまして彼氏です

(ってオイコラ!!誰が彼氏だ!)
(なまえにも春が来たのねぇ…)
(だから違うって!)


0715 たいとる:>にやり

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