勉強、教えてあげようか? 彼氏からのその甘い言葉にころりと騙されてしまったのは他でもない私だ。 だって、明後日数学の小テストなんだもん。 『50点以上取らなかったら、補習だぞ』 数日前の先生の台詞がエコーのように響く。 ああもう、頭痛い! なんでいきなり50点以上なんですか。 いままで赤点(30点以下)しか取ってこなかった私が、もちろん小テストとはいえ良い点数を取れるはずがない。 無理だよ無理。 ……そして私はそんな絶望の中、突然降りかかってきた甘い言葉に救いを求めてしまったのだ。 今思うと、本当に馬鹿だった。 判断を誤った。 めっちゃ意地悪いアイツの性格、よーく分かってたはずなのに。 ああ、馬鹿だ私。 「なに考えてるの?」 「ひいっ」 バンッ、机の上を幸村が勢いよく叩く。 私はびくっと肩を震わせて、隣に座っている彼を見つめた。 怖いけれど決して逃げることはできない。 なぜなら、そう…………今いるのは彼の自宅だからだ。 逃げようとすれば必ず精市に捕まるに決まってる。 「問題に集中しろってさっきも言っただろう?」 「だ、だって、」 「言い訳はいい」 「……っ…」 ひどい。 なにこの拷問とも言える勉強会は。 「ほらなまえ、続けて」 「ひっ、や、」 「…………ふふ、」 本当に拷問だ。 なんでこんなに近いの? これじゃあ精市のことが気になって気になって、とても勉強になんて集中できないよ! 私がわたわたと慌てている中でも、あいつは隣でにっこりとしていた。 ………その笑顔、めちゃくちゃ怖いんですが精市さん… 「あっ、あの!」 「ん?」 「ちか、…近いんです、が!」 「気にしなくていいよ」 「(そういう問題じゃなくて!)」 「………ああ、もしかしてドキドキ…しちゃう?ふふっ」 こいつ絶対に確信犯だ……!!! 私が恥ずかしがってるの分かっててやってる! 「どうしても集中できない?」 「だ、から、近いんだって…っ」 「そんなことを理由にする悪い子にはお仕置きが必要だね」 「ひ、っ!?」 するり、太ももを撫でられる。 そのいやらしい手付きに私は真っ赤になって彼の手を掴んだ。 ああ失敗した、なんでスカートで来ちゃったんだ私! 「手、離して」 「そっ、そしたら触るでしょう!?」 「だめ?」 「だめ!勉強するんでしょ!」 「だってなまえが真面目に勉強しないから」 「する!真面目にするからっ」 こっちも真剣だ。 なんて言ったって私の貞操がかかっているのだから。 恋人同士なんだし、精市とだったらいいんだけど……っていうかもう関係はあるのだから特には気にしないんだけど、でも問題はこの状況にある。 いつ帰ってくるのか分からない幸村家のこともそうだけど、今は真っ昼間。 こんな明るいうちからイチャイチャしてどうするんだ。 ……そんなことをもんもんと考えているうちに、精市は空いていた方の手で私の両手をまとめた。 あいつの手は私が押さえていたはずなのに…やっぱり男の力には勝てないらしい。 そして、自由になった方の手で私の首筋を撫でる。 その手はゆっくりと下がっていって…… 「や、やめ…っ」 「まあ、勉強なら後でも出来るよね」 「はあ…!?ちょっ、あ、待ってっ」 「大丈夫、しっかり教えてあげるよ。……後で、ね?」 にこり。 綺麗に微笑んだあいつを拒否する方法を、私は思いつかなかった。 甘い言葉に気をつけろ (やっぱり、結局は許しちゃうんだよね) --------------------- 続きは…自重しておきます^p^ 0328 戻る |