「ごめん誕生日忘れてた…!」

「………」



12月25日。
今日はクリスマスで、珍しく部活も休みだった。
久しぶりの休みでゆっくりできるかと思いきや、朝から誰かが訪ねてきて。
誰だよまったく………なんて思いながら、俺は玄関へ赴く。
そしたら今にも泣きそうな顔のみょうじが立っていて、今に至る。

誕生日?
……ああ、もしかして俺の?

別に、いいのに。



「ほんとごめん、あれだけ祝う祝うって騒いでたのに…っ」



確かにここ最近のみょうじはうるさかった。
もうすぐ越前の誕生日だね、とか、絶対に祝うからね、とか、それはもううざいくらいに。

みょうじはただのクラスメートで、たまたま席が隣だったからよく話すようになっただけだった。
別に俺は気になってなんて、ない。
…………断じて。

だから、あれだけ祝うって騒いでたのに当日になったら連絡も寄越さないで忘れられていたとしても、別に気にしない。


………なんて、嘘。
本当は少しがっかりしたし、みょうじのこと、少し気になってた…けど。



「別にいいよ」

「でもでもっ、」

「気にしてないし」

「……うう…」

「はあ……泣くの、泣かないの?」

「泣かないけど…」

「じゃあそんな顔するなよ」

「……ご、ごめん…」



また泣きそうな顔をするみょうじ。
なんなんだよまったく。
俺が言った言葉、ちゃんと聞いてたの?



「はい、これ一応プレゼント」

「………サンキュ、」



手渡されたのはクリスマスっぽくラッピングされたものだった。



「お店の人に誕生日用だって言ったんだけど……クリスマスプレゼントみたいになっちゃった」

「ふーん…」

「新しいグリップテープ欲しいって言ってたよね?」

「……覚えてたんだ」

「まあ、ね!」



素直に、嬉しいとか言えない自分が憎い。
ただ一言言えばいいだけなのに、それができないなんて……



「じゃ、私はこれで」



そう言って出て行こうとするみょうじの腕を、なぜか引っ張ってしまった。
びっくりしたような表情の彼女だけど、きっと俺の方がみょうじよりびっくりしてる。
なんで、引き止めちゃったのか。



「なに?」

「え、あ、いや、……」

「???」

「……っ、…家、寄ってけば」

「いい、の?」



こくり、頷く。
とっさに考えた言い訳だけど結果オーライだったらしい、みょうじと話すきっかけが増えたのだから。





1日遅れのバースデイ

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