私の弟は子供らしくなくて生意気だ。
でも時々、可愛い一面も見せたりする。
今まで、たった1人の弟だからって私はつい甘やかしてしまった。
…そのせいなのかはよくわからないけれど、リョーマは私を姉として見ていないみたいで、呼び方だっていつも名前だし、いつも自分と私を対等にみようとする。
私のほうが、一応年上なのに!



「なまえ」

「もう、ノックくらいしてよ」



自分の部屋で考え事をしながら、カルピンと遊んでいたときのことだった。
ノックもせずに入ってくる我が弟リョーマに、ベッドの上から注意をする。



「なに今更。どうでもいいじゃん」

「………もう。もし私が着替えてる最中だったらどうするの?」

「別にもう見慣れてるし…」

「それはリョーマがいつでも勝手に入ってくるからでしょ」



この間だってそう。
いきなり入ってきて、私が着替えてるのにも関わらず会話を始めるの。
きっとまだ中1だし、そういうことには無関心なんだろうな…
でも私が中1だったころは周りの男子はみんなそういう話で盛り上がっていたけれど。
まあリョーマはもともと淡白な性格だし、きっとまだ興味がないんだろう。



「俺に見られるのそんなに嫌なの?」

「馬鹿、そういう問題じゃないでしょ」

「馬鹿はアンタだし」

「なんでよ」

「無防備なのが悪い。部屋だって鍵かければいいじゃん」

「う……だって、」

「なに」

「普通、ノックくらいするし…」

「ふーん、俺のせいなんだ」

「そ、そうだよ!」

「じゃあ今度からはせいぜい用心することだね。俺に入られないように」



………やっぱり、リョーマは生意気だ。
ていうか全然反省してないし。
なんで弟のくせに上から目線なの!

……そんなことを思っていたら、彼もベッドの上に乗ってくる。



「カルピン、こっちこい」

「ほあら〜」

「リョーマなんてやだって」

「………」



むっとした表情になって、私を睨んでくるリョーマ。
そういうところはいつまでたっても子供だなあ、なんて笑みがこぼれた。



「…なに笑ってんのなまえ」

「あ、お姉ちゃんって呼びなさいよ」

「やだね」

「もう、弟のくせに」

「……うるさいな」

「え、?」

「弟だからなに?」



突然近付いてきた彼に、ちゅ、と触れるだけのキスをされる。
一瞬なにが起きたのかわからなくて、きょとんとリョーマを見返した。



「ねえ、弟として見ないで」

「え、なにを……っていうか、い、今、キス!」

「アメリカではよくしてたじゃん」

「それは挨拶だよ!ここは日本なのにっ」

「そんなの関係ないし」

「なんで……!」

「好きだからする。当たり前のことでしょ?」

「好き、って…………んっ」



また唇を重ねられて、目をぎゅっと閉じる。
今度のはさっきみたいな子供だましのキスではなくて、まるで大人がするみたいに濃厚な……
初めての感覚に頭がまっしろになる。
なにも考えられなかった。

どうして私、リョーマとキスしてるの?



「っ、は……っ」



唇が離れてもなお頭の中は空っぽだった。
なんだか酸素不足でくらくらする。



「はぁ、呼吸の仕方も分からないの?」

「!」

「なまえもまだまだだね」

「こ、こんなのいつ覚えたのよ!!」

「さあ?」



にやりと不敵な笑みをたたえながら私の方を見る。
私は恥ずかしさから俯いた。
だって、中1のくせに、私よりも年下のくせに。
なんでこんなこと知ってるの。

今更だけど、顔が熱い。
きっとすごく赤く染まってるんだと思う。

そして頬に手を添えられ顔を上げさせられたかと思えば、彼と視線が合う。



「愛してるよ、なまえのこと」

「え…」



いつの間にこんなに大人びたの?
……男の子って成長が早い。





人でも供でもない

(見かけは子供っぽいくせに、)


0724 たいとる:)にやり

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