突然だけど、私は仁王が好きだ。 いつも2人でふざけあって、私たちは悪友みたいなものだけれど、それでも私は仁王が好きだ。 でも好き、とは言わないの。 だってこの間「好き」「え、うそ」「ウソウソ」「なにそれ」「期待した?」「してねーよ馬鹿」「まあ友達としては好きじゃけどな、お前さんのこと」とかいう会話をしちゃったんだもん。 これは絶対に恋愛対象として見られてないな、って悟ったのよその時。 あーあ、好きなんだけどなあ、すごくすごく。 ずっと好きだったのになあ。 …それも中1の時から。 すごくないですか、出会ったときから悪友続けてるんだよ。 それでずっと片思いを続けてるんだよ。 バレンタインにチョコあげても友チョコだと勘違いされるしさあ。 なんでこんなについてないの、私。 ねえ柳生教えてよ。 「そんなこと私に言われても知りませんよ」 「柳生の馬鹿馬鹿馬鹿」 「馬鹿はあなたのほうでしょう」 「………う」 正論だから、言い返せない。 まったく柳生め……恋する乙女の悩みくらい聞いてくれたっていいじゃない。(せっかく放課後使って相談に来てるのに) 私が人に相談するなんてめったにないことなんだからさ。 レアだよ、レア。 私がこんなに悩んでるのって。 「や、ぎゅ、うー………」 「なんですか?」 「苦しいの。大好きなの、仁王のこと。私どうしたらいい?」 「……………」 柳生の眼鏡が逆光できらりと光る。 私はそんな彼を見つめた。 ふっ、と笑われたような気がした。 「その大好きで大好きでたまらんという俺のことも見破れないとはのぅ」 「え?」 「プリッ」 一瞬、なにがなんだかわからなかった。 どうして、目の前にいる柳生から仁王の声がするのか。 …………3秒後、カツラを取った仁王に、ようやく私は騙されていたのだと気付いた。 いつものごとく仁王が柳生に変装していたのだ。 「ええええええ!!!に、にお!?」 「なんじゃ」 「ど、して……!?まさか最初から…」 「ご名答ー」 「っ、じゃあぜんぶ聞いてたの!?」 「それはみょうじが勝手に暴露し始めたんじゃろ」 「そんな……っ!」 うそ、うそだ。 それじゃあ私の想いは聞かれてたの………?(それも本人に) そんな、うそだよ、ね? 私の片思い生活、今日で終わりなの? 悪友でさえ、いられなくなる…? やだ、そんなの絶対やだ…! なのに……………もう、遅い。 「に、お」 「ん、」 「すき」 「おう」 「ずっと前から、すきだった」 「そうか、なら返事をせんとなあ」 「………え?」 突然の台詞に戸惑っていたら、そのすきに仁王は鞄の中をごそごそとあさりだす。 そしてなにかの箱を取り出して私に向けてきた。 「……なにこれ」 「絶対、家に帰ってから開けるんじゃぞ」 「えっ、」 「じゃあな」 「ちょ、仁王っ!」 教室から出ていく仁王。 そのときの私はまだなにもわからなかった。 ただ頭の中が真っ白で、なにも考えられなくて。 だから下校中もぼーっとしてたんだと思う。(教室をでてからの記憶が一切なかったし) そして、我に返ったときにはもういつの間にか自分の部屋にいて、一人で箱を眺めていた。 「……これ、なんだろ」 仁王は返事だと言ってこれを渡した。 なんでだろう…… てか、これのどこが返事なんだ? きっと、あいつのことだからなにか仕掛けでも…………… と、思って箱を開けたその瞬間。 「っ、ぎゃー!!!」 突然中のものが飛び出してきて、顔に当たった。 まぬけな顔が先端についていて、びよよーんと伸び縮みを繰り返すそれが入っているこれは、まさに……… びっくり、箱……? ま、まさか私からかわれた!? ……うん、仁王ならありえる。 「もう、最悪…」 期待とか、しちゃったのに。 なのに。 しばらくぼーっとその箱を見ていたら、中に紙が入っているのに気付いた。 そしてその紙に書いてあった一言に、私は目を見開く。 「口で言えよ馬鹿ー!」 ハニートラップインボックス 『 ス キ 』 0723 たいとる:)にやり 戻る |