幼なじみって、どうしてこんなにも遠いのかな?

そりゃあ、赤の他人よりかは近いと思うけど。
でも私にとっては、この距離が遠くて仕方ない。



「――――でさ、その子がすっごく可愛くて!」

「ハイハイ、」



それは、いつものことだった。
街で出会った可愛い女の子たちについて熱く語るキヨに、適当な相槌を返しておく。
まったく………家に来て、なんて言われてのこのこと来てみれば、これだ。(期待して損した!)

もうかれこれ数十分は語られてる気がするんだけど…
もしこれがテニスの話だったら、何時間でも話に付き合ってあげてもいい。
でも、なんでよりによって女の子の話?
キヨが根っからの女好きだってことはよく分かってるつもりだけどさ、でもね、いくらなんでも女である私の前でそのすっごく可愛い女の子とやらの話をするのはやめて欲しいんだけど!

…………私は一体なに?
あんたの話を聞くだけの、都合のいい幼なじみってわけ?



「それで、メアド交換したんだー!」

「はぁ、なんでそんなに軽いのかな…」

「え?」

「だーかーらー、キヨは軽すぎだって言ってんの!」

「それは俺を魅了する女の子たちが悪いんだよ」

「それじゃあ世の中の女の子全てが悪いことになるじゃん」

「しょうがないだろ、女の子はみーんな可愛いんだから」

「はぁ………」



本当に、重度の女好きだ。
……そう思いつつ、キヨの部屋のベッドの上にダイブする。
もうやってらんないよ、なんで私こんなところにいるんだろう。
なんで彼の話を真面目に聞いてたんだろう。



「あ、女の子はそうやって無防備に寝ちゃ駄目だって」

「……なによ今更」

「ほら、俺みたいな狼に襲われちゃうよ?」

「え、」



にこりと笑うキヨに、一瞬固まる。
だけど、次に放たれた言葉によって私は心の底からムカついた。



「ま、幼なじみにそんなことしないけどね」

「…………」



なにこの敗北感。
私、そこらへんの女の子に負けたってこと?
キヨの中じゃ、私なんかよりそこらへんの女の子のほうが上ってことなの?

…………なんで、こんなに悔しいんだろう。

この気分を紛らわせたくて、私はほかに話題を探した。

…………あ、そういえば。



「ねえ、」

「ん?」

「隣のクラスの川崎さんさあ、キヨのこと好きらしいよ?」

「え、うそ!!」



驚いたように目を見開かせる彼。
それからキラキラと輝きだした。

…え、もしかしてこれしちゃいけない話だった?



「川崎さんかあ、可愛いよね〜」



あんたにとっては誰でも可愛いくせに。



「付き合っちゃおうかな」

「え、?」



彼の発言に、私は思考停止する。
なんで…そうなるの?
付き合うとか、どうして?

やっぱり、キヨにはしちゃいけない話だったみたいだ。



「いや、でも噂だし嘘かもしれないよ!」

「でも本当かもしれないし」

「っ、だから!やめなよ!」

「なんで?」

「……………」



もう、どうしてあんたはこういう時ばっかり鈍いの?
私がここまで言ってるのに、なんで気付かないんだよ馬鹿…!

もう、幼なじみなんて嫌だ。
幼なじみじゃなかったら、キヨに女の子として、恋愛対象として、見られていたかもしれないのに。

なんで私は、こんなに近い距離にいるのにあなたに手が届かないの……?



ねえどうして、?





AとBの距離=宇宙


0723

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