私が授業の中で1番好きなのは、体育だ。
別に運動が凄く得意というわけでもないけど、そんなに苦手でもないし。
でも、なにより私が体育を好きな理由は……………
体育が、うちのクラスとC組の合同だから。(ちなみに私はD組です)
C組っていったら、連想するのはやっぱり幸村くんじゃない……!!
クラスが違う私にとって、授業中に彼の姿が拝めるのはこの時間だけなのだ。
だから、この体育の時間だけは好き。
サッカーしてたり、マラソンしてたりするレアな幸村くんが見れるし、それに運がよければ、話すこともできるし……!!(なんて幸せな授業なの!)



「いちについて、よーい……………どん!」



先生が発するその言葉を合図に、走り始める男の子たち。
今日は100メートルのタイムを測るらしい。
しかし幸村くんはというと、既に走り終わってゴール付近で休んでいた。
あああ、なんて麗しいの…!(存在しているだけで輝いてる!)
走っている姿も素敵だった。
でもやっぱり…………テニスをしているときが1番生き生きとしているかもしれない、なんてね。
いやいや、私はどんな彼も好きだけど!
むしろ大好きだけど!!



「続いて女子走るぞー」

「「はーい」」



次々と並びだす女の子たちに紛れて、私も友達と共に並ぶ。
………えーと、私は確か2番手かな?
1番手の人が早くも走り終わって、さっそく私が走るはめになった。
いちについて、前方を見渡す。
すると私の瞳に写ったのは華麗なる幸村くんの姿で。
彼もまた、私のほうを見ていた。(私目当て、というわけでもなさそうだけど)
待ってて幸村くん!!!
私、今すぐそっちへ行くから!
マッハ5で行くから!!(無理だけど)



「いちについて、よーい……………どん!」

「幸村くうううううん!!!」

「「「「えええ!!?」」」」



ゴール付近にいる大好きな彼の名を叫びつつ、力の限り走り続ける。
なんだか後ろから驚きの声がたくさん聞こえるけど………どうしたんだろう?
そして、100メートルという名前なだけあって、やっぱり距離は短く、あっという間にゴールへ着く。



「はぁっ、は……っ……ゆき、む、ら、くん…!ただい、ま!」

「ああ、お疲れ花島さん」

「うんすっごく疲れた……!!」

「あれだけ奇声をあげながら走ったら当たり前だよね」

「きゃあっ、聞かれてたか!」

「ていうか皆に聞こえてたけど」

「やだ、私ったら…恥ずかしい……!」

「今更照れられてもなあ。見てるこっちが恥ずかしいよ」

「「「「(なんなんだあの二人……!!)」」」」



ぽっ、と顔を赤く染める私に、容赦なく突き刺さる彼の台詞。
ちくちくと周囲からの視線も痛いけど、でも幸村くんと話していられるのは最高の幸せだ。
しかも幸村くん、私にお疲れって言ってくれたし!



「うおーい!」



突然声をかけられて、きょろきょろと周りを見渡す。
一体誰だ、私と幸村くんのラブラブな会話を邪魔するやつは……!!(地獄に落としてやる!)

………でも、周りにはこっちに向かって話している人が誰もいなくて。
じゃあ誰が話しかけたんだ、と不思議に思っていたら、幸村くんが私の肩をとんとんと叩いて、それから校舎のほうを指差した。
そこは、なんと3年B組のベランダで。
誰かがこちらを眺めていた。

………………あの手を振っている赤髪と、髪を縛っているやつは、まさか…



「丸井くんと、変なやつ………!!」

「俺だけ扱いが酷くなか?」

「あはは、でも確かに仁王は変なやつだよな!」



思わず、お腹を抱えて笑い出す丸井くん。
心なしか、幸村くんでさえも笑いをこらえているように見えた。
当の仁王くんはというと、溜息をついている。
しょうがない、とりあえず謝っておくか!



「ごめんね仁王くん」

「別に、花島なら許してやってもいいぜよ」

「…それにしてもブン太、授業はどうしたんだい?」

「あー、俺達のクラス今自習なんだよ。…………で、ちょうどC・D組が体育してたからそれを眺めてた」

「ふふっ、君達も暇人だね」

「え、あ、いや、まあ確かにそうなんだけど、(魔王が!魔王が降臨しやがった………!!)」

「こっちは忙しいんだ。ねぇ、花島さん」

「えっ、あっ、はい!!」



いきなり話し掛けられて、びくっとしながら答える。
そういえばそうなんだよね、私は幸村くんと話すので忙しいんだった……!!



「二人とも、私と幸村くんのラブラブな会話をよくも邪魔してくれたわね!!」

「はあ……やっぱり花島さんに同意を求めるんじゃなかったな…」

「ふええっ!?ふゅ、ふゅひふらふん!?」



むにっ、と頬をつままれる。(ちなみに両方ね、)
えええ、私ってばなにかまずいこと言った!?
引っ張られて思わず涙目になったけど、でもあんまり力は入ってないみたいだ。(きっと幸村くんが本気出したら、私なんて………)
横目でベランダのほうを見れば、二人が呆れながら見ていた。



「ひ、ひはひへふ!!」

「え?痛い?………ふふっ、だったら静かにしようね」

「は、はひ………っ」



ようやく離されたかと思えば、ひりひりと頬が痛む。
流れる涙はきっと…………………きっと、気のせいだ。



「ゆ、幸村くんに痛くされるなら本望です………っ!」

「あはは、そうかい?」

「あ、あいつら本物の馬鹿だろい!くそう、俺も花島の頬に触りたかった…!!」

「……………お前さんも馬鹿じゃ」





変なところで恥知らず

(でも実は俺も触ってみたかったりして)

title:)DOGOD69





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