あれから。
私は無事に幸村くんのご家族と食事を共にしたあと、帰ろうとしていた。
いや、無事にとはいえないのかな………
泣いたことで目が腫れてしまった私を、彼の家族が見たときは凄かった。
なぜ泣かしたとか、嫌なことをしたのかとか、責任をとらなくちゃとか………
幸村くんは騒ぐ家族を相手に、少し苦労してたみたいだった。
「本当に車で送っていかなくていいの?」
「だから、いいって何回も言ってるだろ母さん…」
そして、もう遅いからと車で送ってくれようとするお母様に、幸村くんは歩いて送ると反論する。
そんなやりとりを、私はぼんやりと眺めていた。
ああ、もしかして私と二人きりになるために徒歩を選んだのかな幸村くん…!!!
それならそうと、はやく言ってくれれば良かったのに……やだもうダーリンってば大胆なんだから!
こうなったら私も期待に応えなくちゃねっ!
うふふ…
うふふふふふふふ……!!
「寒気がするんだけど…」
「あはは気のせいだよ幸村くん」
「…………」
だらしなく緩む頬を両手で押さえながら、私は返事をする。
ああああ、マイダーリンからの視線が痛い………!
とてつもなく痛い…!
…いや、でもよく考えてみれば、これって彼に凝視されているということだよね?
な、なんて幸せなの、見られることが幸せだなんてこれじゃ私ってば変態みたいだけど、でもまぁいいや幸せだから!!!!!
「やっぱり悪意を感じるな」
「悪意じゃないよ好意だよ!」
「………好意、ね……」
「ほらほら精市、外で立ち話なんて風邪ひくから、早く送ってあげなさい」
「……ああ、そうだったね。それじゃ行こうか?花島さん」
「は、はい!じゃあ、お邪魔しました」
「ふふ、ぜひまた来てね」
微笑む彼のお母様にぺこりと頭を下げてから歩き出す。
幸村くんは、隣に並んだ私にいつも通りの笑顔を見せてくれた。
やっぱり、好きだなあ。
どんなことをしても嫌いにはなれそうにないし、逆に、どんなことをされても、嫌いにはなれない気がする。
なんでかな?
恋って、不思議。
「あ、ねえ、花島さん」
「えっ?」
てくてくと歩いて、しばらくたったあと、思い出したように幸村くんは立ち止まる。
なんだろうと首をかしげたら、携帯電話を取り出していて。
「そういえばアドレス交換してなかったよね、教えてくれる?」
「……う、うん!!!!!」
ま、まさか幸村くんのアドレスを手に入れる日がくるなんて…!!!!!
え、どうしよう、手が震える…ていうか全身が震える!
ああああ待って落ち着け私、興奮しないで、…いや無理だよ大興奮だよ!
とにかく幸せすぎて!!!!!
…そんな感じでパニックに陥っている間に、彼は私の携帯を操作してくれたらしく、私が平常心を取り戻した時には既に交換が終わっていた。
「今回、君に一切連絡がとれなくなった時、少し不安になったんだ」
「え……」
「あんなに毎日のように会ってたのに、花島さんの事、何も知らなかったんだって」
本当にどうしたんだろう、幸村くんがこんな台詞、言うなんて。
不自然なくらい、優しいというか。
こんな甘い雰囲気、めったにないのに…
もしかして意識、してくれてる?
………いやそんなわけないよね…
手にいれた繋がり
(このままずっと、家に着かなければいいのにと思った)
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