「………と、いうわけでして……」
「…………」
あれから俺は花島さんに痣のことを白状させていた。
まるで尋問のように、逆らわせないよう質問を繰り返す。
すると最初は渋っていたものの、だんだん素直に答えるようになってきた。
………どうやら放課後、ブン太のファンらしき女生徒2人組に絡まれて喧嘩になり、肩を押されたらしい。
その拍子に机に当たって、この痣ができたと……………それから先生に見つかって、あの時間まで説教を受けていたみたいだ。
2人組の子たちは花島さんとブン太の噂を聞いて、こんな行動にでたらしい、けど………
彼女の足にくっきりと浮かぶ痛々しい痣を見て、こんなに胸が痛むのは……なぜ?
「じゃあ、ブン太とはなにもないんだね?」
「うん、もちろんだよ」
「頼むから…………もう、怪我しないで…」
ぎゅう、きつく彼女の両手を握りしめる。
なんでこんな気持ちになるんだ、苦しくて苦しくてたまらない。
ぎゅうぎゅう、胸を圧迫されているような感覚に陥って、思わず手に力を込めた。
どうかもう、怪我なんてしないで。
君のことほっとけなくなるから。
君が怪我していると、苦しい。
こんなにも、苦しくて苦しくてたまらなくなるんだ。
どうして君は俺をこんな気持ちにさせるの?
「ゆき…むら、くん…?」
「………」
「だ、大丈夫だよ、もう絡まれたりしないよ。女の子達には私が幸村くん一筋だって分かってもらえたみたいだし」
「……一筋だっていうなら、なんで俺を避けてたの?」
「えっ、」
「しばらく、避けてたよね」
「それは……えっと………」
言いづらそうに視線を泳がせる花島さん。
今はこうして普通に話せているけれど、俺、しばらく避けられてたよね。
どうしてか教えてよ。
俺、あんなに悩んだんだから。
「私……幸村くんに相手にされてなかったから、友達が見かねてアドバイスしてくれて、」
「それで?」
「押してダメなら引いてみろって………だから私、2週間くらいは大人しくしようって思って、」
「………」
「でもでもっ、私はやっぱり幸村くんのこと大好きで、離れてるの辛くて…っ」
なんで、なんでそんな泣きそうな顔をするんだ。
俺がもっと苦しくなるじゃないか。
……俺は花島さんのことが好きなのかな。
まだ確信なんて持てないけれど。
だって漫画や小説のように、胸がドキドキするなんてこと今までに一度もないし、顔が赤くなったり熱くなったりすることだってない。
でも、ブン太との噂がガセだったと知って正直ほっとしたし、怪我だってほっとけないし、なにより………彼女を誰かにとられるのは、とても嫌だと思う。
仁王にもブン太にも渡したくない。
…………この芽生え始めたばかりの独占欲を、果たして恋と呼べるのだろうか?
「花島さん、」
「………はい」
「今も俺のこと、好き?」
「だいすきです…っ」
「なら、さ、」
もし、これを恋というのなら。
「俺を惚れさせてみてよ。花島さんに」
それが俺の中で絶対的な確信に変わるように、俺を夢中にさせてみて?
四六時中、花島さんのことを考えるくらいに。
恋かも、しれない
(まだ分からないけど、ね)
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