「彼、今日も荒れていますね」

「ふむ………どうしたものか」



それは部活している時のことだった。
俺が赤也と試合している最中に、ひそひそと聞こえてくる柳生と真田の会話。
きっと彼とは俺のことを指しているのだろう。

……荒れているだって?
おかしなこと言うなよ。



「ゲーム ウォンバイ幸村 7−0!」



試合終了の合図で、俺はコートから出る。
赤也は地面に座ってあがった息を整えていた。



「っ、さす、が、に、今のはきっつい……」

「だらしないよ」

「ぶちょ……っ」

「もっと精進すること。いいね」



そう言った後に、くるりと真田と柳生の方へ振り向く。
にっこりと笑顔を向けてやったら、彼らは少し動揺したみたいだった。



「2人共、誰が荒れてるだって……?」

「「…………」」

「気をつけた方がいいよ、ばっちり聞こえてるからさ」

「…すまん」

「その辺にしておけ幸村」

「やな、ぎ……」

「次、真田と柳生は試合だぞ」



突然現れたかと思えば、代わりに2人は試合の準備だと去っていく。
俺は柳と残されて、タオルで汗を拭きながら会話を続けた。



「仁王もブン太も赤也もジャッカルも、幸村と試合した後くたばっているぞ」

「まったく…だらしないね」

「お前もお前だ、みんなあの状態では練習にならないだろう」

「いいよ、休憩させとけば。そろそろ部活も終わりにしないといけない時間だしね」

「それもそうだが……幸村、」

「なに?」

「お前が最近むやみやたらに試合したりハードな練習内容にするのは、あの事を気にしているからだろう?」



どきん、心が跳ねた気がした。



「部活に集中すれば忘れられると思っている。違うか?」

「はは……お見通し、か」



さすがだね、柳は。
確かに俺はそう思っていたよ、でもどんなに忘れたくてもやっぱり忘れられないんだ。
彼女のことが頭の端にちらついて。
こんな気持ちになったのなんて、初めて、で。

どうしたらいいのか分からない。
それが本音。

考えても考えてもこのもやもやした気持ちの正体に気付くことはできなくて、正直つらい。
それにどうして俺は彼女のことばかり考えているのか、不思議でならない。



「だから言ったろう、後悔すると」

「…………」

「避けられているならこちらから探せばいいんだ、幸村」

「………ありがとう、柳」



そうだ、とにかく一度彼女と話をしよう。
ちゃんと向き合って、避けてる理由を聞こう。
そうしたらこのもやもやした気持ちも晴れるかもしれないし。



「みんな!部活終わりにするよ!」





悩める男の子

(幸村が恋愛方面に関して鈍感とは……ふむ、興味深いデータだな)





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