チクタク、教室に時計の針の音が響く。
他にはシャーペンの音とか、消しゴムの音とか。


…………そう、今はテスト真っ最中なのです。


1日目である今日は、数学、英語の2教科のみ。
日曜日に幸村くんと仁王くんから数学をみっちり教えてもらった私は、すらすらと問題を解いていくことができた。
これはきっといい点がとれるはず!
ていうか愛しの幸村くんがわざわざ私の為に勉強を教えてくれたんだもの、いい点を取らなくちゃ示しがつかないよね。

そう、愛しの幸村くんが……

私の為に……わざわざ………


幸村くんが………





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「うっ、うう」



それはテスト1日目が終わって、クラスのみんなが帰り始めた頃のことだった。
私はただ1人、机に突っ伏して涙を流す。
隣の席に座っていた友達が、はあ、と溜め息をついた音がした。



「あんたねえ………まだ泣いてんの?」

「だ、だって…っ」

「幸村から身を引くことになったのは自分のせいでしょ?なに今更くよくよしてんのよ」

「そうだけど…」



なんであの時つまらない意地を張ってしまったんだろう。
もう来ないとか、他の人の所に行っちゃうからね……とか。
馬鹿みたい。
幸村くんから離れる気なんて全くないのに。

………でも、あんなことを宣言してしまった今、もう幸村くんの元へは行けない。



「目が腫れてる。昨日の夜も泣いたでしょう」

「…………」

「あれだけ付きまとっても振り向いてもらえなかったのに、まだ好きなの?あいつのこと」



こくん、首を縦に振る。
大好きなんだよ、幸村くんのこと。
一年生の時からずっと片思いしてたの。
初めは遠くから見ているだけだった。
だけど二年生になった頃だったかな?
話しかけてみようって気持ちになって。
一回話しかけたら、それからもう止まらなくなっちゃったの。
話す度に、目が合う度に、彼のことを好きになっていって。
今までずーっと諦めずにアタックしてきた。

最初の頃と比べたら普通に話せるようになったし、私だけに笑いかけてくれるようにもなった。

私、本当に本当に幸村くんのこと好きなんだよ。
今だって、幸村くんに会いたくて仕方ない。



「はあ、りこは本当に一途ね」

「……うん」

「それがいけないの」

「え?」

「押して駄目なら、たまには引いてみなさい」



引く…………
確かにそれは今までしてこなかったことだ。



「わかった、やってみる!」

「じゃあひとまず2週間くらいは様子見ね」

「はいっ!………あ、」



ポケットの中で振動がしたかと思えばそれは携帯で、一通のメールがきていた。



「誰?」

「仁王くん。一緒に帰らないかって」

「ふうん、帰っちゃえば?」

「やだよ!」

「なんで?幸村へのあてつけになるじゃない」

「…その幸村くんも一緒らしい…から……」

「じゃあ駄目」

「うん……」



ぴぴぴ、と返事の文章を打つ。
いつもの私なら即行くところだけど………今は我慢我慢。
だってあんなことを言った以上、どんな顔をして幸村くんに会えばいいか分からないもん……

とりあえず、今はまだ。
幸村くんと距離を置こう。





ひとりになる2週間

(しばらくテニス部の人達にも関われないなあ……)





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