放課後、一緒に帰らないかと仁王に誘われてから数分たった頃。
俺は校門の前でぼんやりと考え事をしていた。
周りにはブン太と仁王がいる。
花島さん………昨日言ってたこと、本気なのかな。
泣いてたっぽい…けど…
そもそも、どうしてこうなった?
なんで彼女はあんなこと言い出したんだろう。
あんなに毎日毎日付きまとってきたのに、今日は1回も花島さんの姿を見ていない。
………ああそうか、どうも静かだと思ったら今日は花島さんが近くにいなかったからか。
いつも幸村くん幸村くんって騒がしい彼女なのに。
別に、いつもと違う1日だったからって寂しいというわけじゃない。
ただ………少し気になるだけで。
「あーあ、フラれたな幸村」
さっきまで誰かにメールをしていた仁王が呟いた。
どういう意味か分からなくて、思わず眉を寄せる。
「花島だよ花島。一緒に帰るか誘ってみたけど駄目だって」
「花島さんが…?」
「そ。あいつのことだから幸村もいるって言えば確実に来ると思ったんだがのう。とうとう興味を無くしたか?……ま、昨日あんなことがあったんだから当たり前と言えば当たり前か」
「…なんで仁王が知ってるんだ?」
「あの幸村が女を泣かせたって、結構大きな噂になっとるよ」
………噂、ね。
覚悟はしていたけれど、まさかもう広まったとは。
「アレ、本当だったのか?」
歩き出しながら、ブン太が問い掛けてくる。
アレ、とはきっと噂のことだろう。
「………本当だよ」
「なんで泣いたんだ?あいつ」
「俺にも…よく分からない」
一歩一歩踏み出すけれど、なぜか足取りは重くて。
どうしてこんなに気になるのだろう。
こんな気持ちになるのは初めてだ。
「あのさ、」
「なに?」
「俺、ずっと気になってたんだけど。幸村は花島のこと好きなのか?」
「どうしてそう思う?」
「だって、いつもからかって遊んでるだろい?あいつのこと。でも甘やかしたりもするし、冷たくもするし、」
「………気になる?」
「…………」
こくん、頷いたブン太を見て、本気なんだなと思った。
本気でブン太は、彼女のこと―――――
「………好きじゃ、ないよ。今のところはね」
そう、俺は好きじゃない。
しつこいしうるさいし……でも嫌いでもない。
いつも一途に俺だけを見ててくれて、ストレートすぎる愛情表現もしてくれて。
好き好きばっかり言われて、初めの頃は全然信用してなかったけれど、今では純粋に俺のことを好いてくれてるんだなって分かった。
ちょっと行き過ぎた妄想ばかりの彼女だけど、俺が少し冷たい態度を取れば、見るからに肩を落として落ち込む。
でも逆に優しくしてみると、すごく嬉しそうに笑うし………本当に分かりやすい性格してると思うよ、彼女は。
でもそこが面白くて可愛くて、ついつい苛めたくなっちゃって……
花島さんのことは好きじゃないと思う。
けれど、他の人には絶対に取られたくない。
そう思う。
………こんなの、矛盾してる。
自分でもおかしいと気付いているのに、俺はまだ自分の気持ちがよく分からない。
好きじゃない…のに………
なんなのだろう、このやるせない思いは。
気になるあの子
(君くらいだよ、俺をこんな風にしたのは)
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